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大学共同利用機関法人 自然科学研究機構

基礎生物学研究所

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自然科学研究機構 アストロバイオロジーセンター 宇宙生命探査プロジェクト室 滝澤グループ

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研究の概要

地球と地球外の光合成

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生命は地球以外の惑星にも存在するのだろうか?太陽系外惑星の相次ぐ発見により、この問いかけは科学的に検証可能になりつつある。太陽系近傍の系外惑星に地球と同じような“植物”が存在するとすれば、大気中の酸素の透過光スペクトルや植生特有の反射光スペクトルを次世代超大型望遠鏡により観測することができる。太陽と異なり、可視光より赤外線を多く照射する赤色矮星のまわりや、陸地の少ない水惑星で進化する場合の光合成生物の特性を推定し、期待される生物指標を予測する。

東京都三鷹市の国立天文台に併設しているアストロバイオロジーセンターでは地球近傍の赤色矮星周りに生命居住可能な(温暖で水が存在する)惑星を発見し、直接撮像により生命の痕跡を観測することを目標としている。基礎生物学研究所に拠点を置く生物部門では太陽系外惑星上で検出可能な生物指標を予測するためのカギとなる光合成の研究を進めている。

赤外線利用型光合成の検証

赤色矮星の周りの光環境を詳細に検討すると、地表では近赤外線が豊富な反面、水中に到達する光は可視光のみとなり、大きなギャップが存在する(図1)。最初の酸素発生型光合成生物が水中で誕生する場合、地球と同様に可視光を利用する可能性が高い。酸素濃度の上昇によりオゾン層が形成された後、陸上への進化が期待できるが、水陸境界領域では激しい光強度とスペクトルの変化に曝されるため、近赤外線利用型への進化は上陸後になると予想される。

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図1.惑星表面と水中の光量子束密度スペクトル
地球(左)と仮想系外惑星(右)の光環境を比較。しし座 AD 星の生命居住可能領域に地球と同じ惑星が存在する場合を想定した。

植物形態の進化と光反射特性

可視光を吸収し赤外線を反射する植生由来の反射スペクトルは陸上植物の組織構造に由来する。水面に浮遊する「浮草」が水棲藻類から進化することが可能であれば、陸地の少ない
水惑星であっても植生の反射光を観測することが可能であるため、その可能性を探っている。

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図2.植物の形態と可視光・赤外線反射特性
湛水性植物は近赤外線(NIR)の反射が小さいが、浮遊植物では陸上植物と同等の強い反射光の観測が期待できる。

野外光合成測定試験

太陽系外惑星での植物特性を検討する手がかりを得るため、様々な自然環境下で多様な植物の光合成反応測定を実施している。可視光より近赤外線が多い林床において、豊富な近赤
外線は光合成の生産性向上には寄与しないが、変動光への適応のため に利用されている。

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図3.野外測定用分光光度計(MultispeQ)による測定と解析例

研究室関連資料

参考文献

Takizawa, K., Minagawa, J., Tamura, M., Kusakabe, N., and Narita, N. (2017). Red-edge position of habitable exoplanets around M-dwarfs. Sci. Rep. 7, 7561.

連絡先

滝澤 謙二 特任准教授 E-mail: kenji-t@nibb.ac.jp TEL: 0564-55-7520

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