2012.08.31 基生研セミナー
生きものらしさ“自発性”の源について
大沢 文夫 (名古屋大学名誉教授/大阪大学名誉教授)
2012年08月31日(金) 15:00 より 17:00 まで
明大寺地区1階会議室 (111)
渡辺英治(5595)、児玉隆治(7578)
大沢先生は統計力学を学ばれたあと、1954年に筋肉の収縮機能に関わるたんぱく質「アクチン」の重合体形成現象の実験的解析に着手、モノマーとポリマーの動的平衡などを解明されました。以降、生物物理の研究者としての業績は、タンパク質機能から高分子相互作用・電解質論と広い分野にまたがります。生物運動については1分子レベルから細胞運動、さらに高次機能の生物行動にまで広がっており、「曖昧さ」や「ゆらぎ」の重要性を独自の視点から指摘されています。とくに生命現象の機構を解明すべく展開した物理学的方法論は世界的に高い評価を受け、生物物理学の発展に大きく寄与されました。中日文化賞(昭和38年)、朝日賞(昭和50年)、藤原賞、紫綬褒章(ともに昭和60年)、Natureメンター賞(平成21年)などを受賞しておられます。(参考:JT生命誌研究館のサイエンティストライブラリー)
http://www.brh.co.jp/s_library/j_site/scientistweb/no49/
大沢先生の研究室は「大沢牧場」という愛称でも知られています。「大沢牧場」およびその系譜からは、生命科学の分野をリードする優れた人材が多数輩出しています。大沢先生に影響を受けた多くの研究者や弟子・孫弟子は、非筋肉からのアクチンの初めての抽出、タンパク分子モジュール構造の理論的発見、アクチンフィラメント研究、1分子生理学の創始、べん毛モーターなど卓越した業績を残しています。大沢先生は、いまもなお講義やゼミで若い学生に学問の楽しさ、すばらしさを伝えておられます。(参考:Nature DigestのSpecial Report)
http://www.natureasia.com/japan/mentor/ndigest.2010.100110.pdf