基礎生物学研究所
地球上には、生命誕生以来の長い歴史の中で様々な環境に適応した多種多様な生物が存在している。近年の生物学は、多くの生物に共通する基本原理の理解に重点が置かれ、実験室内での飼育が容易な限られた生物を「モデル生物」として集中的に解析することによって発展してきた。そのため、生物種に特有であるがために、解析がほとんど進んでいない興味深い生命現象が謎として多く残されており、その解明が生物学の今後の重要な課題となっている。この謎を解明するためには、それぞれの現象の解明に適した生物の安定的な飼育・繁殖に加え、実験操作技術を開発すると共に、ゲノム情報及び遺伝子発現等の解析、また遺伝子導入やゲノム編集技術を用いた遺伝子改変技術の導入を進め、新たな「モデル生物」として整備することが重要である。
前身の組織である新規モデル生物開発センターにおいて、共生現象を理解するためのアブラムシ、セイタカイソギンチャクやアーバスキュラー菌根菌、再生研究のためのイベリアトゲイモリ、昆虫の進化研究のためのカブトムシやテントウムシなど、今まであまり研究に用いられてこなかった生物について新たな研究モデルとしての確立に取り組んできた。現在、新規モデル生物に関する情報共有、遺伝子解析から遺伝子改変、表現型解析までをシームレスに繋げる研究のパイプライン化に取り組んでいる。また、「新規モデル生物開発共同利用研究」を通して、他研究機関の研究者と協力して、新規モデル生物の探索や創成、解析技術の開発、研究者コミュニティの育成も推進している。