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大学共同利用機関法人 自然科学研究機構

基礎生物学研究所

研究部門・施設

研究者情報

栂根 一夫
助教
栂根 一夫
TSUGANE, Kazuo
所属:

研究の概要

ゲノム再編成と低温における生物学
 

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自然栽培条件下でDNAトランスポゾンnDart1が転移するコシヒカリ系統から選抜されたイネのLgg変異体は、顕性(優性)の大粒変異である。ほ場において栽培し結実した穂(A)と玄米(B)。

ゲノム中には多くの転移因子(トランスポゾン)が存在しているが、その多くは転移する事ができない。しかし稀にゲノムによる抑制機構をすり抜けて転移できるトランスポゾンが存在してゲノムの再編成を起こしている。どのようにゲノムはトランスポゾンの制御しているのか、また転移によって引き起こされるゲノムの再編成は生物にどんな影響を与えているのかを調べている。新たな課題として、低温における植物の反応を理解することで、低温や超低温における保存技術の開発を目指している。

ゲノムのダイナミズム

多くの生物のゲノム中には多くのトランスポゾンが存在している。例えばヒトではおよそ45%、イネでは35%がトランスポゾン様の配列である。トランポゾンによるゲノムの再編成は、進化の原動力一つとなっていると考えられるが、トランスポゾンの転移は、ホストのゲノムにとって有害になるので、転移する能力はジェネティックやエピジェネティクに抑制されており、通常の成育条件下で転移する事はまれである(文献9)。そこで転移できるDNAトランスポゾンに注目して、トランスポゾンによるゲノムのダイナミズムと遺伝子発現の制御機構の解明を明らかにすることを試みている。
 

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図1. nDartの挿入による優性変異の原因の解明(文献4)


高い精度でゲノム配列が決定されているイネは、トランスポゾンの挿入領域やゲノムの再編成を詳細に解析することができる。我々は自然栽培条件下で活発に転移することができるDNAトランスポゾンnDart1を同定した。nDart1の転移には、自律性因子nDart1が必要であるが、通常はエピジェネテイックに抑制されている。nDart1が活発に転移する時期を明らかにし(文献7)、さらに、脱メチル化によってnDart1を持たないイネ系統でも転移を活性化できることも示した。nDart1は、GC含量の差が大きい領域に挿入し易い性質をもっているので、ゲノム中に存在している転移の制御因子の同定に向けて研究を行っている。

トランスポゾンの挿入による優性変異

ゲノムの変異の多くは劣性となるが、nDart1の挿入変異体の中にはしばしば優性となる突然変異体が観察される。不完全優性でわい性となるBdt1変異体では機能のあるマイクロRNAの発現様式がnDart1の挿入で変化していた(図1,文献6)。DNAトランスポゾンが優性変異の原因となる例は非常に珍しく、その原因は未解明な部分が残されているので、優性となった変異体を選抜して解析を行っている。

低温による生物の保存

植物の種子は優れた保存器官であり種によって保存可能な期間は大きく異なるが、環境条件を調えることで保存期間を伸ばすことができる。また種子では保存できない遺伝形質も存在するので、組織での保存も必要となる。低温における植物の反応を理解することで、保存の難しい組織の保存方法の開発を試みている。

共同研究利用の募集

hATファミリーは、植物で発見され動物にまで存在している起源の古いDNAトランスポゾンです。イネ遺伝子の逆遺伝各的解析や活性なイネのDNAトランスポゾンを利用した共同利用研究に応じる事ができます。

研究室関連資料

参考文献

1. Nishimura, H., Himi, E., Rikiishi, K., Tsugane, K., Maekawa, M. (2019). Establishment of nDart1-tagged lines of Koshihikari, an elite variety of rice in Japan. Breed. Sci. 69, 696-701.
 
2. Nishimura, H., Himi, E., Eun, C.-H., Takahashi, H., Qian, Q., Tsugane, K., Maekawa, M. (2019). Transgenerational activation of an autonomous DNA transposon, Dart1-24, by 5-azaC treatment in rice. Theor. Appl. Genet. 132, 3347-3355.
 
3. Gichuhi, E., Himi, E., Takahashi, H., Zhu, S., Doi, K., Tsugane, K., and Maekawa, M. (2016). Identification of QTLs for yield-related traits in RILs derived from the cross between pLIA-1 carrying Oryza longistaminata chromosome segments and Norin 18 in rice. Breed. Sci. 66, 720-733.
 
4. Hayashi-Tsugane, M., Maekawa, M., and Tsugane, K. (2015). A gain-of-function Bushy dwarf tiller 1 mutation in rice microRNA gene miR156d caused by insertion of the DNA transposon nDart1. Sci. Rep. 5, 14357.
 
5. Hayashi-Tsugane, M., Takahara, H., Ahmed, N., Himi, E., Takagi, K., Iida, S., Tsugane, K., and Maekawa, M. (2014). A mutable albino allele in rice reveals that formation of thylakoid membranes requires SNOW-WHITE LEAF1 gene. Plant Cell Physiol. 55, 3-15.
 
6. Eun, C.-H., Takagi, K., Park, K.I., Maekawa, M., Iida, S. and Tsugane, K. (2012). Activation and Epigenetic Regulation of DNA Transposon nDart1 in Rice. Plant Cell Physiol. 53, 857-868.
 
7. Saze, H., Tsugane, K., Kanno, T., and Nishimura, T. (2012). DNA methylation in plants: Relationship with small RNAs and histone modifications, and functions in transposon inactivation. Plant Cell Physiol. 53, 766-784.
 
8. Hayashi-Tsugane, M., Maekawa, M., Kobayashi, H., Iida, S., and Tsugane, K. (2011). A rice mutant displaying a heterochronically elongated internode carries a 100 kb deletion. J. Genet. Genomics 38, 123-128.
 
9. Takagi, K., Maekawa, M., Tsugane, K., and Iida, S. (2010). Transposition and target preferences of an active nonautonomous DNA transposon nDart1 and its relatives belonging to the hAT superfamily in rice. Mol. Gen. Genomics 284, 343-355.

連絡先

栂根 一夫 助教 E-mail: tsugane@nibb.ac.jp TEL: 0564-55-7521