基礎生物学研究所
多様な生物種についてのゲノム解読が進み、それらの比較解析から生物の多様性とそれを生み出す進化プロセスを理解することが可能になりつつあります。併せて各種のオミクス関連データも蓄積し、それらがデータベースに蓄積されています。当研究室では、これらのデータベースを用いて、生物種横断的なゲノムの構築原理の解明を目指す研究を行っています。特に多様なゲノムが蓄積している微生物のゲノムに着目して、それらの比較解析を通じて、その間にみられるパターンの共通性と多様性を解析し、それによってゲノムの進化過程を推定したり、機能未知遺伝子の機能を推定したりすることを目指しています。この目的のため、独自の微生物比較ゲノムデータベースを構築し、これに基づいて比較ゲノム解析の新しいアプローチの開拓を目指した研究を行っています。
直接目に見えない微生物を研究する上で、ゲノム情報はことさらに大きな価値を持つため、すでに多様な微生物のゲノム配列が決定され、その数はなお急速な拡大を続けている。こうした大量のデータに基づく比較ゲノム研究を推進するため、微生物ゲノム比較解析データベースMBGDの構築を行っている。特に、比較解析を行う際に必要となるゲノム間の遺伝子対応付け(オーソログ分類)について、効率的なアルゴリズムの開発を行っている。また、オーソログ分類の結果として得られる系統パターン(ある遺伝子が各ゲノム中に存在するかしないかというパターン)や融合タンパク質の存在などから遺伝子の機能推定を行える可能性が指摘されており、大量のデータを活用することにより、その可能性を高めることも目指している。

図1. 微生物比較ゲノムデータベースMBGD
原核生物の進化においては、祖先から子孫へという垂直的な遺伝情報の流れに加えて、種を超えた水平的な遺伝情報の移動が本質的に重要な役割を果たしていることが知られており、病原性の理解などの応用面からも注目されている。しかし、こうした複雑な微生物のゲノム進化過程を包括して理解するための戦略はまだ確立していない。ゲノム進化過程の詳細な解析は、類縁度の高いゲノムを比較することによって可能になるので、MBGDのデータを活用しつつ、近縁ゲノム比較解析の戦略確立に向けた研究を行っている。特に、ゲノムの垂直的な進化プロセスをまず明確にすることを目指して、近縁ゲノム間で遺伝子の並び順が保存された「コア構造」に着目した研究を進めている。
内山 郁夫 准教授 E-mail: uchiyama@nibb.ac.jp
