2024.10.18 NIBB動物行動学研究会 第41回講演会
カニの行動生態学 〜月周繁殖と寄生〜
豊田賢治 博士(広島大学統合生命科学研究科・テニュアトラック助教)
2024年10月18日(金) 16:00 より 17:00 まで
Zoomオンライン
神経行動学研究部門 西海望(nozo@nibb.ac.jp)
日本各地で見られるアカテガニは半陸生カニ類で、主に沿岸近くの林などに生息している。本種は7-9月の繁殖期の新月と満月(大潮)の日没後の満潮時刻前後に海岸に移動して幼生を放出する。
このアカテガニの幼生放出リズムは地域によって異なることが示されている。瀬戸内海の集団は新月・満月(月周性)の日没後(日周性)の満潮時刻前後(潮汐性)に幼生放出行動が観察されるのに対し、太平洋に面する伊豆半島では潮汐性を示さず、月周性と日周性に強く支配される。また、潮汐差の少ない日本海側の佐渡島(新潟県)では月周性と潮汐性を示さない。さらに、これまでのアカテガニの繁殖行動に関する生態調査は、幼生放出行動を示した個体を目視計測する方法で行われていたためオスの行動リズムは全く報告がない。そこで私は、日本海側集団の繁殖リズムの再調査とオスの繁殖リズムの有無を調べることを目的に、佐渡島と能登半島の個体群を対象に毎晩一定の時間内に出現したアカテガニを全て捕獲し、雌雄の割合と抱卵の有無を記録した。その結果、佐渡と能登島集団も太平洋側と同様に月周性を示すこと、さらにそのリズムには明瞭な雌雄差があることを見出した。
本セミナーでは野外調査から得られたデータをご紹介するとともに、現在取り組んでいるアカテガニの繁殖リズムの生理機構に関する取り組みも紹介したい。また、最近新たに取り組んでいるカニに寄生する甲殻類が宿主力二の行動に与える影響についても紹介する。
詳細や参加登録方法などはこちらをご覧下さい。
https://sites.google.com/view/nibb-ethology/オンライン講演会?authuser=0
学生・研究者向けの内容ですが、一般の方のご参加も歓迎です!
19時30分~21時00分オンライン研究交流会あり【詳細はwebで】
本活動は基礎生物学研究所2023年度共同利用研究(24NIBB801) の助成を受けています