2024.09.27
新規モデル生物開発室セミナー(空間オミクスセミナー1)
短鎖ヘアピンDNAを用いた蛍光多重ISH法の原理と応用
演 者恒岡 洋右 博士(東邦大学 医学部 解剖学講座・准教授)
日 時
2024年09月27日(金) 10:00
より 11:00 まで
場 所基礎生物学研究所 明大寺地区1階 会議室 (111)
詳 細In situ hybridization(ISH)法は細胞の形態を保ったまま核酸の局在を検出する手法である。この10年の間にISH法における様々な技術革新がなされ、mRNAの1コピーレベルの高感度検出や複数の遺伝子の同時検出などが可能なBranched DNA ISH (商品名RNAscope, RNAview)といった手法が開発され、世界的に利用されている。しかしながら、これらの手法は導入費用だけでなく消耗品も非常に高額であることが技術利用の障害となっている。また、組織へのダメージが強く、特別な処理を行うために免疫染色などの他の手法を組み合わせにくいことなどもデメリットの一つとして挙げられる。In situ hybridization chain reaction (isHCR) 法はヘアピンDNAを用いたシグナル増幅法を利用するISHの一つである。この手法も他の技術と同様に1分子イメージングが可能であり、1ステップで多重検出が短時間で出来る技術として開発されたが、コストの面ではいまだ利用しづらい部分がある。このような課題を解決するため、我々はisHCR法をベースとした新たな蛍光ISH法を開発した。isHCR法で用いるヘアピンDNA配列の検討により、コストを抑えて高いシグナルノイズ比で増幅可能な短鎖ヘアピン配列の法則を見出した。この短鎖ヘアピンを利用したisHCR法では低コスト化を実現しただけでなく、よりプロトコルが簡便になり作業時間が短いこと、プロトコルの柔軟性が高く他の染色も同時に行えるなど多くの長所を持つということが明らかになってきた。また、動物種や組織の種類に依存せず同じプロトコルで染色が可能であることなども利点の一つであろう。本セミナーでは、この改良isHCR法の原理について解説するとともに、応用例についても具体例をまじえつつ紹介したい。