2024.09.24 所長招聘セミナー
動物は何を見ているのか?
最先端視線トラッキングによる「生態学的に妥当」な条件での動物認知の探求
狩野 文宏 Junior Project Leader (University of Konstanz / Max-Planck Institute Animal Behaviour)
2024年09月24日(火) 10:00 より 11:30 まで
基礎生物学研究所 明大寺地区1階 会議室 (111)
神経行動学研究部門 西海 望(5878)
「目は心の窓」というように、視線は認知プロセスを理解する上で重要な手がかりとなる。また、視線トラッキングを用いた認知研究は、従来のラボ実験とは異なり、より「生態学的に妥当」な環境で行うことが可能である。本発表では、類人猿と鳥を対象にした視線トラッキングによる認知研究の最新の成果を紹介する。まず、類人猿の研究では、アイ・トラッキングと映像技術を組み合わせることで、類人猿が「心の理論」(他者の信念や知識といった心的状態を理解する能力)を持つ可能性を示した一連の研究を紹介する。次に、コンスタンツ大学で行われた鳥の実験では、モーションキャプチャシステムを使った三次元の頭部トラッキングによって鳥の視線推定が可能であること、そして最近のコンピュータビジョン技術によりマーカーレスでも実現できることを示す。さらに、採餌中の鳥の群れにおいては、捕食者の存在などの特定の情報が非常に速い速度で群れ内に共有されている可能性があり、これは視線追従のようなメカニズムによるものであるという研究結果も紹介する。「生態学的に妥当」な視線研究が、新たな認知研究の地平を拓く可能性を示す。