2022.12.05 新規モデル生物開発室公開セミナー(共催:超階層生物学センター)
哺乳類四肢の疾患や進化に関わるエンハンサーの機能解析
牛木亜季 博士研究員(カリフォルニア大学サンランシスコ校)
2022年12月05日(月) 11:00 より 12:00 まで
明大寺地区1階 第1セミナー室 (132-134) および ZOOM
新規モデル生物開発室 鈴木賢一(7542)
エンハンサーは、遺伝子の組織・時期特異性を制御するDNA配列であり、その機能の変化は、疾患や種間の形態の多様性を引き起こす要因となりうる。本発表では、先天性四肢疾患とコウモリの四肢発生に関するエンハンサーの知見についてご紹介したい。
Acheiropodia(無手足症)は、先天性の四肢欠損を示す遺伝病である。20年前に同疾患に関与する欠失領域がおおまかに同定されたが、その発症メカニズムについては不明であった。我々は、発端者由来の細胞を用いて、欠失領域の同定と機能解析を行った。その結果、同配列がCTCFを介したZRSエンハンサーの足場として、SHH遺伝子の活性化に寄与していることを明らかとした(1)。
コウモリは、哺乳類で唯一、動力飛行を可能とする翼をもち、マウスと共通の祖先から進化したと考えられている。しかしながら、中間形態をもつ化石は見つかっておらず、その進化メカニズムは不明である。Ahituv研究室では、コウモリ胚四肢を用いたゲノミクス解析を過去に行っており、多数のコウモリ特異的エンハンサー候補配列を同定した(2, 3)。私は、マウスを用いて、これら配列の機能解析を行なっており、得られた最新のデータに関して議論したい。
【参考文献】
1.Ushiki A et al. “Deletion of CTCF sites in the SHH locus alters enhancer-promoter interactions and leads to acheiropodia” Nat. Commun. (2021)
2.Booker BM et al. “Bat Accelerated Regions Identify a Bat Forelimb Specific Enhancer in the HoxD Locus” PLoS Genet. (2016)
3.Eckalbar WL and Schlebusch SA et al. “Transcriptomic and epigenomic characterization of the developing bat wing.” Nat. Genet. (2016)