2011.03.07 重点共同利用研究進行状況報告
次世代シーケンサーを用いたリシーケンスによる原因遺伝子同定法の開発と、シロイヌナズナの茎頂分裂組織に関わるCLVシグナル伝達系の解析
澤 進一郎 (熊本大学大学院自然科学研究科)
2011年03月07日(月) 11:00 より 12:00 まで
明大寺地区 第一セミナー室(132)
生物進化研究部門 長谷部 光泰 内線7546
器官分化のほぼ全てが胚発生段階で完了する動物と異なり、植物は分裂組織により、死ぬまで新しい器官を作り続ける。このことから、この分裂組織は植物の 形態形成において根本を担う重要な組織であり、その性質やサイズは、遺伝的に、厳密に制御されていると考えられている。我々は、シロイヌナズナの茎頂分裂 組織の機能調節に関わるCLV3ペプチドホルモンのシグナル伝達系の解析を行っている。人工合成CLV3ペプチド耐性突然変異体の単離を網羅的に行うこと で、受容体や下流因子の単離を目指している。これまでに、SOL2受容体、及びRPK2受容体を単離し、報告してきた。我々は、このようなCLV3ペプチ ド耐性を示す突然変異体を多数単離しているが、その原因遺伝子の単離に時間を要するのが難点であった。
さて、高等植物のモデル植物として、現在 の所、シロイヌナズナが多く利用されている。マイクロアレイなどのオーム技術開発により、シグナル伝達の一つのアウトプットである転写制御機構に関して は、網羅的な遺伝子発現プロファイルの解析も可能となってきた。また、メタボローム解析やホルモノーム解析等、様々なオーム解析が可能となってきている。 しかし、今なお、シグナル伝達因子を単離するためには、分子遺伝学的解析は強力なツールであり、原因遺伝子単離には、時間のかかる地道なマッピングが必要 となっている。我々も多数の突然変異体からの原因遺伝子同定には多くの時間を要してきた。
そこで、私たちは、遺伝学的手法と、次世代シーケンサーを組み合わせた効率的な網羅的シグナル伝達因子単離法を確立することを目的とし、重点共同利用研究を行っている。
平成22年度中に、3度のシーケンスランをさせていただいた。これまでに、28サンプルのリシーケンスを行い、約50%の確率で原因遺伝子の推定を行うこ とができた。本セミナーでは、我々のCLV3シグナル伝達系の解析と共に、次世代シーケンサーによるリシーケンスの現状について報告する。