2009.03.25 ERATOセミナー
シロイヌナズナにおける異なる組織由来のカルスの解析
杉本 薫 (カリフォルニア工科大学、Elliot Meyerowitz研究室)
2009年03月25日(水) 15:30 より 17:00 まで
明大寺地区1階会議室(111)
長谷部分化全能性進化プロジェクト 服部 宏之 内線7600 hhattori@nibb.ac.jp
植物体の組織片を、適当量の植物ホルモン存在下で培養すると、 シュートや根などの植物体を構成する全ての組織が誘導される。これ より、多くの動物細胞と異なり、植物細胞には分化全能性が備わって いることが古くから提唱されてきた。しかし、何が植物細胞に分化全能性をもたらしているのか、そのメカニズムは依然として多くが未解 明である。再生過程の植物細胞がどのような分化状態をたどっているのか、また、異なる組織由来の再生現象同士に共通の機構が存在するのか、といった基礎的な疑問ですら未だ解明が待たれている。これらの基礎的な疑問に答えるため、われわれは、根、双葉、花弁の三つの組織を用いて植物再生実験を行い、新組織形成の前段階に誘導される無定形細胞塊(カルス)のキャラクタリゼーションをそれぞれの組織について行った。その結果、共焦点顕微鏡を用いた根組織マーカーの観察と、マイクロアレイによる網羅的遺伝子発現解析により、われわれは、どの組織由来のカルスもみな、根端分裂組織に類似した組織であることを示した。さらに、遺伝子変異体の解析により、カルス形成と側根原基形成が、それぞれの開始段階で、同様の分子制御下にあることを示唆した。