2007.12.19 統合バイオ・イブニングセミナー
DNAドリフト運動の流体効果、細胞骨格フィラメントの非平衡ダイナミクス
菊池 伯夫 (インド科学研究所(IIS)凝縮系理論センター)
2007年12月19日(水) 18:00 より 19:30 まで
山手3号館9階セミナー室
岡崎統合バイオサイエンスセンター(発生遺伝) 小林 悟 内線5875
今回のセミナーでは、生物において重要な役割を果たすDNA、そして細胞骨格等を形成するフィラメント(アクティン、微小管など)の非平衡ダイナミクスを物理的視点から調べる。
先ず、実験技術の進歩により、分子レベルでの計測が十分可能になってきた、DNA等の単一高分子鎖の一端を、光ピンセット等で溶媒中を引っ張るときの運動を理論的に調べる。具体的には、引っ張る力と速度の非線形応答、高分子鎖の引っ張る方向の広がり等をみる。高分子の内部自由度、各セグメント間の流体力学的相互作用、非一様な高分子の形状の競合により、引っぱる力・鎖長により異なるいくつかの領域があることを示す。
次に、細胞骨格等を形成する、フィラメントのダイナミクスを調べる。これまで物理学が主に対象としてきたのは、熱揺らぎ・外場等で駆動する受動的な系である。 一方、細胞はアクティン等の細胞骨格を形成するフィラメント上を、ATPをエネルギーとし自ら駆動する分子モーター等からなる”アクティブ”な系であり、その非平衡状態で細胞の形状等を保っている。最近実験で、分子モーターの
運動を止めたとき(系は熱平衡状態)、細胞質の形状が保てなくなり、細胞核がつぶれると言う現象がある。この現象の理解を念頭に、フィラメントの運動を、アクティブ系と言う非平衡現象を扱う新しい枠組みを用い調べる。
##講演後に簡単な懇親会を行いたいと思います。
気軽にご参加ください。懇親会費(1000円程度)は、当日集めたいと思います。