2007.12.03 ERATO公開セミナー
高等植物におけるオーキシンを介した側根形成の制御機構
深城 英弘 博士 (神戸大学大学院理学研究科生物学専攻)
2007年12月03日(月) 15:00 より 17:00 まで
生理研5階 講議室(515室)
ERATO長谷部分化全能性進化プロジェクト 事務所 内線:7600
高等植物の地下部を構成する根系は、発芽後伸長する主根と、主根から発生する側根や、地上部器官から形成される不定根などによって構築される。植物ホルモンのオーキシンは側根形成を促進するが、その分子機構は未だ解明されていない。我々のグループは、オーキシンを介した器官形成のモデルとして側根形成に注目し、これまで側根形成能に欠損をもつシロイヌナズナslr(solitary-root)変異体、およびarf7 arf19二重変異体の解析から、オーキシン応答転写活性化因子ARF7、ARF19とAux/IAAタンパク質(SLR/IAA14)との相互作用を介した遺伝子発現が側根形成開始に重要なことを明らかにしてきた(Fukaki et al., 2002, 2005, 2007)。さらに最近、変異体を用いたマイクロアレイ解析や誘導系植物を用いた発現解析などから、ARF7やARF19の標的遺伝子としてLBD (Lateral Organ Boundaries-domain)/ASL (AS2-domain like)ファミリーに属するLBD16/ASL18とLBD29/ASL16を同定し、これらが側根形成で機能することを明らかにした(Okushima et al., 2007)。また、slr変異体のサプレッサー変異体の解析によって、クロマチンリモデリング因子PICKLEが側根形成開始を負に制御することが強く示唆された(Fukaki et al., 2006)。本セミナーでは、これらの分子遺伝学的アプローチによって徐々に解明されてきた側根形成の機構とオーキシンの役割について概説するとともに、この研究分野の動向について展望する。
参考文献
1) Fukaki, H., Okushima, Y. and Tasaka, M. (2007) Auxin-mediated lateral root formation in higher plants. Int. Rev. Cytol. 256, 111-137.
2) Okushima, Y., Fukaki, H., Onoda, M., Theologis, A. and Tasaka, M. (2007) ARF7 and ARF19 regulate lateral root formation via direct activation of LBD/ASL genes in Arabidopsis. Plant Cell 19, 118-130. 他