2007.09.28 ERATO公開セミナー
染色体動態を制御するタンパク質の解析
松永 幸大 博士 (大阪大学大学院工学研究科 生命先端工学専攻)
2007年09月28日(金) 16:00 より 17:30 まで
基生研1階 第2会議室(151-152)
ERATO長谷部分化全能性進化プロジェクト 事務所 内線:7600
高等真核生物のゲノムはDNAとヒストンからなるクロマチンファイバーとして細胞核中に存在し、体細胞分裂時には高度に凝縮した分裂期染色体を形成する。この染色体形成機構は細胞分裂期のダイナミックな生命現象の一つである。
この染色体動態を制御するタンパク質を網羅的に明らかにするために、ヒト子宮頸ガン細胞HeLa細胞を用いて中期染色体の高純度精製法を確立し、染色体プロテオーム解析を行った。質量分析の結果、200種類以上のタンパク質を同定し、高等真核生物で初めて染色体タンパク質のカタログ化に成功した(1)。さらにRNAiによるノックダウン機能解析を行い、染色体動態を制御する新規の染色体タンパク質を見出した。本講演では、ヌクレオリンとASURA(阿修羅)が染色体動態を制御していることを報告したい(2, 3)。
次に、植物の染色体局在タンパク質を探索するために、GFP融合タンパク質を発現させた形質転換シロイヌナズナを蛍光顕微鏡観察し染色体や核に局在するタンパク質をスクリーニングした。その中の一つはオーロラキナーゼをコードしていた。植物オーロラキナーゼは分裂期特異的に検出される翻訳後修飾であるヒストンH3Ser10やSer28のリン酸化も制御する。オーロラキナーゼの特異的阻害剤であるヘスペラジンをタバコBY-2細胞に添加すると、ラギング染色体が生じ微小核が形成される。このことから、植物オーロラキナーゼは姉妹染色体分離に関与すると推察している(4)。また、染色体に局在するヒストン・メチル基転移酵素についても報告したい。
参考文献
(1) Uchiyama, S. et al. (2005) Proteome analysis of human metaphase chromosomes. J. Biol. Chem. 280, 16994-17004.
(2) Ma, N. et al. (2007) Nucleolin functions in nucleolus formation and chromosome congression. J. Cell Sci., 121, 2091-2105.
(3) Takata, H. et al. (2007) PHB2 protects sister-chromatid cohesion in mitosis. Curr. Biol. 17, 1356-1361.
(4) Kurihara, D. et al. (2006) Aurora kinase is required for chromosome segregation in tobacco BY-2 cells. Plant J. 48, 572-580.