2007.04.10 ERATOセミナー
ERATO 長谷部分化全能性進化プロジェクト シロイヌナズナ初期胚で非対称に発現するWOX8遺伝子の発現制御機構
植田美那子博士 (ドイツ フライブルグ大学・Prof. Thomas Laux 研究室)
2007年04月10日(火) 16:00 より 17:00 まで
明大寺地区1階会議室(111)
ERATO長谷部分化全能性進化プロジェクト 事務所 内線:7600
高等生物は複雑な構造をもつが、それらは全て受精卵という1つの細胞に由来する。ほとんどの高等植物では受精卵は非対称性をもち、その不等分裂によって異なる発生運命をもつ娘細胞を生じる。このときの軸性は胚および成熟植物体の体軸に相当するが、初期発生の過程でどのような仕組みで体軸が形成され、維持されるかについては現在でもほとんどわかっていない。
シロイヌナズナのホメオボックス型転写因子をコードするWOX2 (WUSCHEL-related homeobox2)とWOX8遺伝子は受精卵で発現し、受精卵の不等分裂によって生じた頂端細胞と基部細胞に、それぞれの発現が受け継がれる。特にWOX8の発現は胚発生後期に至るまで、基部細胞に由来する細胞系列のみに完全に受け継がれ、その遺伝子産物は胚の形態形成において重要な役割を果たすことが明らかになりつつある。そこで、胚の頂端―基部軸に沿ったWOX8の非対称発現を制御する機構について知るために、WOX8のcis配列の同定と、それに結合する因子の探索、およびWOX8の非対称発現を変化させる突然変異体のスクリーニングを進めている。また、既知の遺伝子のなかに制御因子があるかを調べるために、初期胚の形態に異常を示す様々な突然変異体、および各種ホルモン投与下でのWOX8の発現パターンについても解析している。本セミナーでは、これまでに得られた結果を踏まえ、高等植物の体軸を形成・維持する仕組みについて議論したい。