2014.11.21 基生研セミナー
骨髄で造血幹細胞・前駆細胞を維持する微小環境ニッチ
長澤 丘司(京都大学再生医科学研究所)
2014年11月21日(金) 16:00
明大寺地区1階 会議室 (111)
生殖細胞研究部門 北舘 祐(5866)
生体の組織の維持と損傷からの再生には、多分化能と自己複製能を合わせ持った組織幹細胞が重要な働きを担っており、組織幹細胞の維持や制御にはニッチと呼ばれる限局した特別な微小環境が必須であると考えられている。しかし、組織幹細胞ニッチの実体や作用の分子機構は十分明らかではない。その中で、骨髄に常在して血液系・免疫系細胞を産生する組織幹細胞である造血幹細胞とそのニッチの研究は最先端を進んでいる。2003年、骨辺縁に局在するN-カドへリンを高発現する骨芽細胞の一種(SNO細胞)が造血幹細胞ニッチの最初の候補細胞として報告されたが、その機能が証明されるには至っていない。私たちは、ケモカインCXCL12とその受容体CXCR4が、造血幹細胞のホーミング(生着)と維持、免疫担当細胞の産生に必須であることを明らかにし、骨髄腔内に一様に分布しCXCL12を高発現する長い突起を持った細網細胞の一種(CAR細胞)を同定した。更に、CAR細胞が脂肪・骨芽細胞前駆細胞であること、CXCL12に加えて造血幹細胞や赤血球前駆細胞の増殖に必須のサイトカインSCFの骨髄での主要な産生源であること、造血幹細胞・前駆細胞ニッチとして必須の機能を持つことを明らかにした。本セミナーでは、骨髄の造血幹細胞ニッチを構成する候補細胞とその機能について、CXCL12とCAR細胞の研究を中心に、ニッチの形成と維持の分子機構に関する最新の知見を含めて紹介したい。