2007.09.06 基生研セミナー
フロリゲン(花成ホルモン)が見つかったってほんと?
島本 功 (奈良先端科学技術大学院大学・バイオサイエンス研究科・ 教授)
2007年09月06日(木) 16:00 より 18:00 まで
明大寺地区第2会議室(152)
分子遺伝学研究部門 寺田理枝 teradar@nibb.ac.jp
1936年にChailakhyanは、キクを用いて植物が日長を感受する場は葉であることを確認し、実際に花成誘導される茎頂から空間的に離れていることから、花成誘導を引き起こす物質が葉で作られ、茎頂分裂組織まで移動することで花成が誘導されると考え、この物質のことをフロリゲンと名付けたが、その実態解明は難航していた。我々は、イネの開花促進遺伝子であるHd3a(FTのホモログ)のイネ花成促進機構の解明を目指し、短日条件下での花成促進がHd3aの発現誘導に依存し、長日条件では逆に発現抑制されることを見出した。また、光中断による花成遅延の原因が、Hd3aの発現が転写レベルで抑制されるためであることをすでに明らかにしてきた。次いでイネの花成誘導の短日条件でのHd3a mRNA発現組織を詳細に解析した結果、イネの葉のみで特異的に発現していることを見出し、さらにHd3aプロモーターGUSで詳細な解析を進めた結果、Hd3aは葉の維管束の師部周辺でのみ発現していることが明らかとなった。次にHd3aタンパク質局在および制御の観察のためHd3aプロモーターにつないだHd3a-GFPの形質転換体を作った。この植物体で、花成促進の効果を持つことが確認でき、この植物体の茎頂分裂組織の縦断切片をレーザー蛍光顕微鏡で観察した結果、Hd3a-GFP融合タンパク質の蛍光が茎頂分裂組織で観察された。Hd3aのプロモーター領域は、維管束でのみ発現を制御できることや、茎頂分裂組織に維管束は存在しないことから、今回観察されたHd3a-GFP融合タンパク質は維管束から運ばれたものであると考えられた。
参考文献:
1.S. Tamaki, S. Matsuo, H.L..Wong, S.Yokoi, and K..Shimamoto, Science. 316, 1033-1036. (2007).
2.L.Corbesier, C.Vincent, S.Jang, F. Fornara, Q.Fan, I. Searle, A.Giakountis, S.Farrona, L.Gissot, C.Turnbull, and G.Coupland, Science 316, 1030-1033. (2007).
3.瀧本敦「花を咲かせるものは何か」(中央公論社,1998).
懇親会のお知らせ:
「たつむら」18:45~20:30、会費;5000円(学生の方は割引します)
参加希望の方は7681(寺田)まで、8月31日までにお願いします。