2005.10.25 基生研セミナー
カテコールアミン研究:歴史的展望と最近の進歩について
永津俊治 (藤田保健衛生大学医学部 薬理学講座・名古屋大学環境医学研究所 脳生命科学分野 客員教授・名誉教授)
2005年10月25日(火) 15:00 より 16:30 まで
明大寺地区1階会議室(111)
神経生化学研究室 / 形質転換生物研究施設 笹岡俊邦 内線5850 sasaoka@nibb.ac.jp
カテコールアミン(ド-パミン、ノルアドレナリン、アドレナリン)は、脳では3種共に神経伝達物質、ノルアドレナリンは交感神経の伝達物質、アドレナリンは副腎髄質ホルモンである。 カテコールアミンは伝達速度の遅い神経伝達物質群に属して、伝達速度の速いグルタミン酸、GABAなどの神経伝達を調節して、脳内の神経回路網で重要な役割を果たしている。 カテコールアミンは、アミノ酸のチロシンから、チロシン3-モノオキシゲナーゼによりDOPAを経てドーパミンとなり、ノルアドレナリン、更にアドレナリンに合成され、神経終末で神経細胞内のシナプス小胞よりエキソサイトーシスの機構により分泌される。 シナプス後部細胞膜の受容体に情報伝達をして後、シナプス前部の神経細胞膜トランスポーターにより神経終末に再取り込みされて神経伝達が終了し、シナプス小胞のトランスポーターにより元のシナプス小胞に再貯蔵される。 分子生物学により、カテコールアミンの合成、遊離、代謝の関連酵素、受容体、トランスポーターの全ての遺伝子とタンパク質の構造が解明された。 更に、遺伝子改変動物が作製されて、カテコールアミンの生理機構が解明されている。 カテコールアミンは、ストレスに直接に関連する神経伝達物質・ホルモンであり、パーキンソン病、統合失調症、うつ病、高血圧、など脳、末梢の広範囲の疾患に関連している。 最も構造の簡単なド-パミンが、ヒトに特有な脳機能と病態に関係が深いことは興味深い。