2004.07.30 基生研セミナー
エピジェネティックサイレンシングの防波堤として働くクロマチンリモデリング
広瀬 進 (国立遺伝学研究所 総研大遺伝学専攻 教授)
2004年07月30日(金) 16:00 より 17:30 まで
明大寺地区1階会議室(111)
細胞分化研究部門 諸橋 憲一郎 内線5865 moro@nibb.ac.jp
ショウジョウバエでは、Hox遺伝子群の発現パターン維持とposition effect variegation(PEV)という2つのエピジェネティックな遺伝子発現制御が知られている。GAGA因子をコードしているTrlはトリソラックス遺伝子群のひとつであり、かつPEVのmodifierとしてこれら両方に関与することが知られている。
われわれは、GAGA因子がUbxのbxd領域やAbd-Bのiab-6エレメントなどHox遺伝子の発現制御領域にFACTをリクルートし、FACTがヒストンH2A/H2Bをヌクレオソームから引きはがしてクロマチンリモデリングを促進することにより、Hox遺伝子群の発現維持に関わることを明らかにしてきた(Shimojima et al. Genes & Dev. 17:1605-1616,2003)。また、GAGA因子が眼の色を支配するw遺伝子とセントロメアヘテロクロマチンの間に存在するGAGA因子結合配列にFACTをリクルートし、w領域内のヒストンH3K9メチル化を抑えてwの発現を維持することにより、PEVに関わることを見出した。これらの成果に基づき、GAGA因子-FACT複合体に依存したクロマチンリモデリングが、K9メチルやK27メチルなどサイレンシングのマークがついたヒストンH3を未修飾H3に交換することにより、ポリコームやヘテロクロマチンサイレンシングの侵攻をたち切る防波堤として働くというモデルを提唱する。