2012.12.03 所長招へいセミナー
基本単位を組み上げて自発的に複雑な秩序構造を形成する全く新しいモデル:カイメン骨片骨格形成
船山 典子 (京都大学大学院理学研究科 生物物理学教室 分子発生学講座)
2012年12月03日(月) 16:00 より 17:30 まで
明大寺地区1階 会議室 (111)
岡田 清孝 (7650)
最近のNature誌news and comment (09Nov)で紹介された(Yahoo newsでも)新種の深海性カイメンの動画や、カイロウドウケツの骨片標本、ヘッケルのカイメン骨片骨格の美しいスケッチ等を見たことがありますか? この美しい形の「身体を支える建築物」である骨片骨格が、完成予想図なしに、カイメンの身体の中の個々の細胞のその場、その時の相互作用の重ね合わせで、「骨片」というパーツを配置し組み上げ、秩序立った構造として形成されていることは、不思議で科学的な興味を魅かれてやまない。
しかしこの仕組みについては全く謎のままであった。
私達は、骨片骨格形成が段階を追って解析出来る優れた実験系として淡水性のカワカイメンの無性生殖、「数千個の幹細胞のみの集団からの個体形成過程」を用い、また骨片の生体内での可視化を工夫し、成熟した骨片がダイナミックに運ばれて1段目においては間隔性を持って立てられること、この骨片を運ぶ大工さんとも言うべき特殊な細胞の存在を見いだした。細胞が骨片という単位をどこに配置するべきかを決め、1つ1つ骨片を組みあげ、立体的な秩序構造を構築するこの機構には、単純な反応拡散などだけでは説明出来ない、おそらくは体内空間の感知、刻々と拡張する体を支える為の機械的な力の感知などを含む時空間ダイナミクスを含む仕組みが働いているのではないかと考えるに至っている。実験手法などに制限がある難しさもあるが、楽しんで工夫し進めてきたこれまでの研究と共に、空間からの制御を示唆する最近のプレリミナリーな結果、今後の研究計画を含めて紹介したい。