2025.05.30 新規モデル生物開発室セミナー
新規多重免疫染色法RePROBEを用いた胃がん微小環境の空間解析
千場 隆 先生(公益財団法人がん研究会 がん研究所 発がん研究部)
2025年05月30日(金) 14:00 より 15:00 まで
明大寺地区1階 会議室(111)
TSB新規モデル生物開発室 鈴木賢一(7540)
悪性腫瘍組織は、がん細胞以外にも免疫細胞や線維芽細胞などの様々な細胞によって構成されている。このようながん細胞をとりまく腫瘍微小環境(Tumor microenvironment: TME)は、腫瘍の増殖、転移、治療抵抗性において重要な役割を果たしている。シングルセルRNA-seqに代表されるような近年の一細胞レベルの解析技術の進歩により、TMEを構成する各種細胞の亜集団の詳細や、それぞれの相互作用などが明らかとなってきている。一方で、腫瘍組織内における細胞の局在、またそれぞれの細胞の位置関係も、細胞の機能やTMEの性質に関わることが知られている。このような空間的位置情報を保持し、かつ一細胞レベルの解像度でTMEを解析するための研究手法として、多重免疫組織染色が近年注目されている。
我々は、蛍光免疫組織染色とイメージングを繰り返し行うことで、同一FFPE組織切片上で30種類以上の抗原を検出できる多重免疫染色法RePROBEを開発し、胃がん微小環境における免疫細胞や線維芽細胞の解析を行なっている。本講演では、最近の多重免疫染色技術について概説するとともに、RePROBEの技術的原理および解析から得られた胃がん腫瘍微小環境における知見を紹介する。