2022.11.08 部門公開セミナー
P-bodyのトランスクリプトーム解析により明らかとなった翻訳の時空間的制御の重要性
七野 悠一 博士(理化学研究所 開拓研究本部 岩崎RNAシステム生化学研究室)
2022年11月08日(火) 14:30 より 15:30 まで
基生研明大寺地区1階第1セミナー室 (132-134) 及び ZOOMオンライン(メールにて別途案内)
分野横断研究ユニット 山下 朗(内線7512; ymst@nibb.ac.jp)
細胞は翻訳を多彩に調節することにより、生命活動を制御している。翻訳による発現調節には事前に転写したmRNAが必要だが、それを放置しておくと意図せず翻訳・分解されてしまう危険性がある。そのため、mRNAを翻訳系や分解系から一時的に保護し、その後適切なタイミングで保護を解除して翻訳を促す機構が必要である。近年、この機構を理解する上で注目されているのが、RNP (Ribonucleoprotein) 顆粒とよばれるRNAとタンパク質の凝集からなる非膜性の構造体である。その1つであるP-body (Processing body)はmRNAを保管する場所の候補であると考えられてきたが、P-bodyを介した翻訳制御機構には未だ不明な点が多く残されている。我々はFAPS (Fluorescence-activated particle sorting)というセルソーターを用いた顆粒の生化学的精製手法を用いてP-bodyのトランスクリプトーム解析を行った。その結果、P-bodyへのmRNA局在には選択性があり、特定の過程に関するmRNAがまとまってP-bodyに存在していること、そして細胞が適切なシグナルを受けると一部のmRNAが選択的にP-bodyから放出されることがわかった。また、リボソームプロファイリングによる翻訳効率の網羅的データと比較することにより、P-body内は翻訳が抑制された環境であり、放出されたmRNAの翻訳が促進されることが明らかとなった。これらの結果は、P-bodyを介したmRNAの時空間的制御による翻訳調節機構の存在を示唆する。