2021.10.20 部門公開セミナー
機械学習を用いた生物形態の定量化とその応用について ~霊長目の下顎骨を対象として~
堤 真人 大学院生(東京大学理学系研究科物理学専攻古澤研究室)
2021年10月20日(水) 13:00 より 15:00 まで
Zoomオンライン
定量生物学研究部門 青木一洋 内線(5235)
形態は生物にとって非常に重要な表現型の一つであり、種によって異なる形態が現れそれらが様々な機能と密接に関連している。種ごとの形態の違いや形と機能の関連を理解するためには、形態を定量化することが重要となる。しかしながら、「かたち」をどのように測定するのかは明らかではなく、様々な困難が生じる。形態を定量するために従来からよく用いられている手法の一つとしてランドマーク法が挙げられる。この手法は形態上にランドマークと呼ばれる幾何学的または解剖学的に特徴的な点を配置し、その点の位置情報に基づいて定量化する方法である。しかしながらこの手法はランドマークの位置に関する明確な定義が無いためランドマークを決める恣意性が残る。また、種によっては対応するランドマークが無いため、しばしば種間の比較が困難になるなどの問題点が存在している。
本研究はこの問題点を解決するため、機械学習手法の一つである変分オートエンコーダ(VAE)を応用し、ランドマークを用いず画像のみから形態を定量化するMorph-VAEという手法を構築した。構築した手法を用いて、サルなどの霊長目に属する種の下顎骨を対象にし定量化を行なった。本モデルを用いると下顎骨の画像のみで科レベルで分類できる特徴量を抽出することができた。また、この抽出された特徴量がどのようなものかを詳しく調べると一部生物学的な特徴を反映していることが示唆された。それに加えて本手法は骨が一部欠損したデータにおける欠損部位の復元などの応用も可能であることを示した。
本講演では本手法がどのような対象に応用でき、どういった生物学的な問いにアプローチすることができるのかを議論していきたい。