2013.04.24 部門公開セミナー
両生類の原腸形成運動とは?
橋本 主税 (JT生命誌研究館・形態形成研究室・主任研究員 大阪大学大学院理学研究科・招聘教授)
2013年04月24日(水) 16:00 より 17:30 まで
明大寺地区1階 会議室 (111)
初期発生研究部門 藤森 俊彦 (5860)
両生類の原腸形成運動の研究は一世紀に渡って続いており、近年では分子生物学の知見の集積により、過去の実験発生学の諸問題が遺伝子レベルで解明されてきている。その発展に最も大きく貢献したのはツメガエルと分子生物学の相性の良さであろう。すなわち、イモリなどの発生現象をツメガエルの分子生物学によって解明してきたという図式が大まかになりたつ。その前提には少なくとも両生類の発生過程は基本的に共通であるという認識が存在し、だからこそ、その実験に最も適している動物で解析した結果を統合して共通理解とするわけである。しかし、発生過程を丁寧に観察すると、どうも昔から教科書に書かれているような形態形成運動が少なくともツメガエルでは起きていないように見える。ではツメガエルの形態形成運動は実際にはどのように進むのか?それは他の両生類種と質的に異なるのか?あるいはやはり共通な機構でなされているのか?という疑問が必然的に生じる。
これらの疑問に答えるために、我々はツメガエルとアカハライモリの発生過程を比較しその原腸形成運動が互いにどう似ておりどう異なっているのか?それらをどう解釈すれば共通理解に至るのか?についての研究を行なっている。その結果として、一見すると極端に異なっているように見える両者の形態形成運動が視点をずらすことでかなり似通って見えることを見いだした。これらの知見について本セミナーでは簡単に紹介させていただき、内容に関して活発な議論をお願いしたい。さらに、この両者の比較から導き出せる原腸形成運動の「両生類モデル」が少なくともトリの原腸形成に似ているように見えることから、両生類モデルが脊椎動物全般の原腸形成過程を説明する統一モデル構築への議論に耐えられるのかについても討論をさせていただきたい。遺伝子や分子の難しい話はいっさい出てこないので、学部学生にも理解できる内容である。ぜひ皆さんからの新鮮なコメントをたくさんいただけることを期待する。
共催:科学研究費補助金「哺乳類初期発生の細胞コミュニティー」