2012.08.20 部門公開セミナー
性決定遺伝子が移りかわる現象の理解に向けて -フグ性決定遺伝子の同定-
菊池 潔 (東京大学大学院農学生命科学研究科付属水産実験所)
2012年08月20日(月) 11:00 より 12:00 まで
山手3号館2階西 共通セミナー室
生殖遺伝学研究室 田中 実 (5851)
性の二型の存在は根源的な生命現象のひとつであるが、近年、多くの脊椎動物において近縁種間でさえも性決定遺伝子が保存されていない可能性が次々と報告されており、脊椎動物の性決定機構の研究を、従来の「高度に保存された発生機構の研究」から、「集団間や近縁種間で急速に進化する機構の研究」へと捉え直す動きが強まっている。性決定遺伝子が移り変わるプロセスを詳細に理解するためには、系統関係が明らかな近縁種グループ内(あるいは種内)において、移り変わり前後の性決定遺伝子を同定し、それらの遺伝子がいかにして生まれ、維持されてきたかを知る必要があるだろう。そのような観点から我々は、フグ近縁種群を対象とした研究をおこなってきた。トラフグは2002年にゲノム概要が公開された魚だが、100-500万年前の種分化・放散をへて20種以上の近縁種が存在するので、種分化研究という観点からも興味深い生物である。今回の研究では、トラフグの性決定遺伝子を、「ゲノム概要を活用した大規模連鎖マッピング」および「野生集団を用いた関連解析」により同定した。驚いたことに、トラフグの性は一塩基多型により決定されていた。また、トラフグの近縁種の中には、この遺伝子(多型)とは異なる性決定遺伝子を持つ種が存在した。