2009.05.19 部門公開セミナー
呼吸器上皮、および間充織組織それぞれの発生における Notch シグナルの役割
森本 充 (Washington University in St.Louis)
2009年05月19日(火) 16:00 より 17:30 まで
明大寺地区1階会議室(111)
岡崎統合バイオサイエンスセンター 分子発生学研究部門 高田 慎治 内線5241
美しく調和のとれた胚発生は、高度に制御され細胞間情報伝達によって成し遂げられる。 Notch シグナルは、線虫から人まで進化的に保存された隣接細胞間の情報伝達経路であり、胚発生過程において細胞群間の境界線決定、二者択一の運命決定、幹細胞と分化細胞の非対称性の確立などに関わっていることが知られている。近年、発生工学的手法の劇的な進歩により、マウス胚の形態形成および臓器形成におけるNotchシグナルの役割が急速に明らか になってきた。一方で、呼吸器発生は、視覚的にドラマチックな気管支の形態形成と、in vitro 培養系の容易さから、古くから発生学者たちの興味を引いていた。呼吸器発生過程の、いつ、どこでNotch シグナルが活性化され、活性化した細胞はどのような運命を辿るのか?そして、その意義は何か?
我々は、独自に開発した Notch シグナル活性のレポーターマウスと、組織特異的ジーンター ゲティングを利用し、呼吸器発生過程における Notch シグナルの役割を包括的に解析した。その結果、Notch シグナルが気管支上皮発生過程で、クララ細胞-繊毛細胞間の二者択一の運命決定を担っていること、また呼吸器間充織組織からの平滑筋発生過程で、動脈平滑筋細胞の誘導に Notch シグナルが必要であるが、気管支平滑筋細胞には不要であることが示された。特にクララ細胞-繊毛細胞の運命決定に関して、更なる詳細な解析によりそのメカニズムが明らかになりつつあるので、我々の提唱するモデルを示し、考察したい。