2009.03.30 部門公開セミナー
ヒストンH2Bの脱ユビキチン化を介したFLOWERING LOCUS C (FLC)遺伝子のエピジェネティックな転写活性化機構の解明
玉田 洋介 (Department of Biochemistry, University of Wisconsin-Madison Amasino laboratory)
2009年03月30日(月) 16:00 より 17:30 まで
明大寺地区1階会議室(111)
生物進化研究部門 長谷部 光泰 内線7546
シロイヌナズナのFLOWERING LOCUS C (FLC) 遺伝子は春化応答に中心的な役割を果たしている。FLC遺伝子はMADSドメインを持つ転写抑制因子をコードしており、その発現により花成が抑制される。FLC遺伝子の発現は、ヒストンのリシン残基のメチル化やアセチル化、アルギニン残基のメチル化、ヒストン変異種であるH2A.Zの挿入などといったエピジェネティックなメカニズムによって高度に制御されていることが明らかにされてきた。今回これらに加えて、ヒストンH2Bの脱ユビキチン化がFLC遺伝子の転写活性化に関与していることを明らかにした。シロイヌナズナにおけるヒストンH2Bの脱ユビキチン化酵素をコードするUBIQUITIN-SPECIFIC PROTEASE 26 (UBP26) 遺伝子の機能破壊株では、FLC遺伝子の発現低下および早期開花の表現型が観察された。また、UBP26機能破壊株のFLC遺伝子座において、ユビキチン化されたヒストンH2Bの過剰に蓄積していたと同時に、ヒストンH3の36番目のリシン残基のメチル化(H3K36me3) 量が低下し、27番目のリシン残基のメチル化(H3K27me3) 量が上昇していた。H3K36me3はFLC遺伝子の転写活性化に、H3K27me3は転写抑制に機能するので、FLCの発現が低下したと考えられる。以上のことから、UBP26によるヒストンH2Bの脱ユビキチン化は、ヒストンH3のリシン残基のメチル化を制御することによってFLC遺伝子の転写を活性化し、開花を抑制していることを明らかにした。
※セミナーは英語で行われます。