2009.02.20 部門公開セミナー
イネの葉や胚の発生過程における軸構築機構
桧原 健一郎 (東京大学大学院農学生命科学研究科 日本学振興会 特別研究員(PD))
2009年02月20日(金) 16:00 より 18:00 まで
明大寺地区1階会議室(111)
植物器官形成学研究室 五十嵐 久子 内線7569
高等植物の地上部の葉・茎・花といった器官は茎の頂部に存在する茎頂分裂組織(SAM)から産出される。SAMは胚発生過程に生じ、発芽後の器官形成や主茎の形成において中心的な役割を持つ。また、植物の発生において葉原基形成過程における向背軸の確立は、種特異的な葉の発生を促すだけではなく、茎頂分裂組織の構築や地上部の形態形成を行う上でも重要な役割を果たしている。しかし、それらの分子基盤に関してはまだ未解明な部分が多い。我々の研究室では様々な形態形成に関わるイネの変異体を単離・収集し、分子遺伝学的な解析を進めている。胚発生過程でSAMを欠失するshootless (shl)変異体の解析から単子葉植物ではsmall RNAと向背軸に関わる因子がSAM形成・維持機構に深く関与することが明らかとなった。さらに向背軸とSAMとの関係に着目して向背軸に異常を示すadaxialized leaf1(adl1)、adl2変異体の解析を現在行っている。これら二つの原因遺伝子を同定した結果、ADL1はカルパイン様システインプロテアーゼを、そしてADL2は非常にユニークなレセプター型キナーゼをコードしていることがわかった。遺伝学的解析からADL1とADL2は、形質発現において密接な関係を持ち、また軸構築を直接制御するのではなく、表皮組織の形成・維持を介して、葉の軸構築や 胚発生に影響を及ぼすことが示唆された。
本セミナーでは、これまでに得られた結果を踏まえ、軸を構築する仕組みについて議論したい。