2007.12.17 部門公開セミナー
Mechanism of Organelle Inheritance
神 唯 博士 (Life Sciences Institute, University of Michigan)
2007年12月17日(月) 13:30 より 15:00 まで
明大寺地区職員会館2階大会議室
分子細胞生物学研究部門 大隅良典 内線7515
細胞分裂時、核・染色体を含めた細胞内の細胞生育に必須な因子の多くが、娘細胞に能動的に分配されることが知られている。しかし核・染色体以外の細胞生育に必須な因子群の分配機構の研究は未だ緒についたばかりである。
私達は、細胞分裂時に細胞小器官・オルガネラが娘細胞へ分配される分子機構を明らかにするため研究を進めてきた。モデルとして出芽酵母の液胞(vacuole)の分配に焦点を当てている。Vacuoleは、class-V myosinの一つであるMyo2p、vacuole特異的なアダプター因子であるVac17p、そしてvacuole膜タンパク質であるVac8pの3者を含む複合体によりアクチンを介して、母細胞から娘細胞へと運ばれることが分かっている。しかしながら、この3者のタンパク質がいつ、どのように複合体を形成するのかは未だ不明である。
私達は変異体の解析から、2型タンパク質脱リン酸化酵素(Type 2C protein phosphatase) Ptc1pがvacuole分配に関わることを明らかにした。私達はさらにPTC1がペロキシソーム、分泌小胞(secretory vesicle)、ASH1mRNAの娘細胞への輸送にも関与していることを突き止めた。またPTC1はミトコンドリアとERの娘細胞への分配にも関わっていることが報告されている。Vacuole、ミトコンドリア、ペロキシソーム、secretory vesicleの輸送はMyo2pが、ERとASH1mRNAの輸送はMyo4pが担っている。PTC1は、これらclass-V myosinの局在を制御し、さらにVac17pを含む細胞小器官特異的なアダプター因子群のタンパク質の発現も制御している。以上の結果はPTC1が細胞小器官の輸送複合体の形成に関わることにより、分配を時期・空間特異的に制御していることを強く示唆している。