2007.08.06 部門公開セミナー
線虫 C.elegansにおけるメンブレントラフィックの分子メカニズムの解析 ~分子レベルから高次機能解明にむけて~
佐藤 健 (群馬大学 生体調節研究所)
2007年08月06日(月) 15:30 より 17:00 まで
明大寺地区職員会館2階大会議室
分子細胞生物学研究部門 大隅良典 内線7515
メンブレントラフィックは細胞内における物質輸送や分解、シグナル伝達経路の調節など生命現象の様々な局面において重要な役割を担っている。しかしながら、多細胞生物におけるメンブレントラフィックの役割についてはいまだ未解明な部分が多い。そこで私達は線虫 C. elegansの遺伝学的、細胞生物学的利点を活かす事により、多細胞生物においてはたらく新たな細胞内メンブレントラフィック関連因子の発見、そしてその分子メカニズムの解明を目指している。
C. elegansの卵母細胞による卵黄タンパク質の取り込みはレセプターを介したエンドサイトーシスによって行われており、哺乳類細胞のLDLの取り込みと類似のメカニズムであることが知られている。そこで、卵黄タンパク質の1つであるVIT-2にGFPを結合し、卵母細胞による卵黄タンパク質の取り込みに異常を示す変異株を探索した結果、多数の rme(receptor-mediated endocytosis defective)変異株が分離された。本セミナーではまずこれらの rme変異株とその原因遺伝子の解析結果についてご紹介したい。
また一方で C. elegansのカベオリンホモログ(糖脂質やコレステロールを多く含む細胞膜表面の膜構造カベオラの主要構造タンパク質)に注目し、生殖腺における細胞内動態を解析したところ、カベオリンは卵母細胞の成熟とともに新規の細胞内区画(CAV-1 bodyと命名)に蓄積し、受精直前には細胞膜直下に移行すること、また受精直後にはCAV-1 bodyが一斉に細胞膜と融合することを見い出した(Sato et al, 2006)。このことからCAV-1 bodyは調節性分泌顆粒の一種と考えられる。また、受精後に細胞膜に輸送されたカベオリンは受精卵が卵割を開始する前に速やかかつ選択的に細胞内に取り込まれ、分解されることが明らかとなった。本セミナーではこのカベオリンのダイナミックな動態制御にはたらく分子メカニズムについてもご紹介する。