2007.06.28 部門公開セミナー
短日植物アサガオの光周性花成機構
早間 良輔 (はやま りょうすけ) 博士 (Max Planck Institute for Plant Breeding Research)
2007年06月28日(木) 16:00
明大寺地区1階会議室(111)
分子遺伝学研究部門 星野 敦 内線7682
高等植物は日長に敏感に反応し、花成時期を厳密に決定する。このような反応は光周性花成と呼ばれ、季節変移に伴う環境変化を植物が事前に察知することを可能にする点で重要な意味をもつ。日長に対する花成反応の様式は多様であり、植物は、各々のおかれた環境に最適な反応様式を発達させたと考えられる。特によく知られているのが長日植物と短日植物であり、前者は日が長くなると、後者は日が短くなるとそれぞれ花成を促進する。
光周性花成の成立には日長の識別が必須であり、この機構には明暗といった光環境情報と概日時計が発生させる内部時間情報との相互作用が伴う。長日、短日植物は日長に対して逆の花成反応を示すが、この基本的機構は長日、短日植物を問わず一般的であると考えられている。
光周性花成の分子的研究は長日植物であるシロイヌナズナにおいて最も進んでおり、時間情報と光環境情報を統合し“長日シグナル”を発生させる鍵遺伝子CONSTANS(CO)、COに転写が活性化され花成を導く花成誘導遺伝子FLOWERING LOCUS T(FT)が同定されている。これらの遺伝子は短日植物であるイネの光周性花成制御においても重要であり、長日植物と短日植物は遺伝子レベルで互いに類似した花成制御機構を共有していると考えられている。我々は短日植物アサガオからFTの相同遺伝子PnFTを同定し、花成の指標遺伝子として解析することで、アサガオ光周性花成の機構的特長の理解を目指している。得られた研究結果を元に、長日植物シロイヌナズナと短日植物アサガオの光周性花成制御機構における類似、相違点について議論したい。さらに、同じ短日植物に属するイネとアサガオの花成制御機構における類似、相違点についても同時に議論したい。