2007.01.26 部門公開セミナー
syntaxin1A/HPC-1ノックアウトマウスの高次神経機能の解析:このマウスはヒト自閉症の動物モデルとなるか?
赤川公朗先生 (杏林大学医学部細胞生理学 教授)
2007年01月26日(金) 15:00 より 16:30 まで
明大寺地区1階会議室(111)
脳生物学研究部門 山森哲雄 内線7615
syntaxin1A/HPC-1(SY)はシナプス機能を制御すると考えられている。我々は高次神経機能におけるSYの役割を明らかにする為、ノックアウトマウスを作成した。SY null mutant(null)を電気生理学的に解析した結果、基本的シナプス伝達は正常であるが脳海馬での長期増強現象が低下していることが明らかとなった。行動学的検討からは軽度の学習傷害、記憶における消去過程の遅延ならびに常同性を示唆する行動的特徴が見出された。
またnullは認知機能の指標である潜在制止試験において異常が見られたが、セロトニン取り込み阻害剤の投与により正常に戻ることから脳内セロトニン作動神経系の異常が推測された。
これらの結果はヒト自閉症に見られる異常特性との類似を示唆しており、nullは自閉症の新しい動物モデルであると考えられた。
参考文献 Fujiwara et al., J.Neurosci. 26 (2006)5767-5776