2004.03.10 部門公開セミナー
ショウジョウバエ神経幹細胞の不等分裂におけるヘテロ3量体G蛋白質の役割
布施直之 (理化学研究所 発生再生科学研究センター 博士)
2004年03月10日(水) 16:00 より 17:00 まで
明大寺地区1階会議室(111)
統合バイオサイエンスセンター 小林 悟 内線5875
多様な細胞種をつくりだす仕組みの1つに、細胞の非対称分裂がある。ショウジョウバエの神経幹細胞は、非対称分裂を研究するよいモデルである。胚発生の時期に、神経幹細胞は、大きさの異なる2つの娘細胞に分裂する。この時、運命決定因子が小さい娘細胞へ選択的に分配されるので、小さい娘細胞は神経母細胞の性質を獲得し、大きい娘細胞は元の幹細胞の性質を維持する。今までに、運命決定因子の非対称分配のメカニズムなどが明らかとなってきた。しかし、娘細胞の大きさの非対称性をつくる仕組みは、よくわかっていない。私達は、突然変異のスクリーニングから、ヘテロ3量体G蛋白質のβサブユニットをコードする、Gβ13F 遺伝子の変異を単離した。Gβ13F 変異において、運命決定因子が一方の娘細胞へ分配されるにもかかわらず、神経幹細胞がほぼ同じ大きさの娘細胞に等分裂した。細胞分裂における微小管を観察したところ、本来起こる紡錘体の大きさの非対称性が失われ、両極とも安定した微小管を形成していた。Gα サブユニットとの関係を調べることによって、極性をもった3量体G蛋白質のシグナルが微小管の形成に非対称性をつくり、非対称な紡錘体によって神経幹細胞が不等分裂していると示唆された。さらに、Gβ13F 変異胚の神経発生を観察した結果から、娘細胞の大きさの非対称性が神経発生にとってどのような役割を果たすのか、議論したい。