2003.12.18 部門公開セミナー
線虫 C.elegans における発生のタイミングを制御する遺伝子の解析
森田清和 (コロラド大学ボウルダー校)
2003年12月18日(木) 16:00 より 17:30 まで
明大寺地区1階会議室(111)
形態形成研究部門 上野直人
線虫 C.elegans において、heterochronic gene の変異は、発生過程のある相の早熟あるいは遅延の表現型をしめす。たとえば、lin-14 および lin-28 変異体は、幼虫後期で成虫の特徴を示し、また、lin-4 および let-7 変異体は、成虫の特徴を持たないまま親虫となる。lin-4 および let-7 は、22ヌクレオチドからなるmiRNA からなり、lin-14 等の 3UTR に結合しその発現を制御することで、発生過程を調節している。これらの制御機構は、進化的に保存されたメカニズムであることが最近明らかとなってきた。
我々は、陰門形成過程において、RAS シグナルの下流で働く転写因子 lin-31 の下流で働く遺伝子を同定する目的で、lin-31 の表現型を抑制する変異体のクリーニングを行った。その結果、heterochrony の表現型を示す変異体が2種類同定された。現在、これらの遺伝子クローニングおよび、既知の heterochronic gene との遺伝学的な関係を調べており解析結果をお話します。
また、同じスクリーニングで得られた別の変異体は、let-21 であった。let-21 は、マウスのプロトオンコジーンである ECT2 と相同であり、Rho 特異的な GEF(GTPase exchange factor) をコードしていた。ETC2 は、サイトキネシスの過程に働くことがすでに明らかとなっていたが、let-21 変異体は、サイトキネシスの異常に加え、細胞移動の異常も示すことから、新たな機能を持つことが示唆された。