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大学共同利用機関法人 自然科学研究機構

基礎生物学研究所

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自然科学研究機構 アストロバイオロジーセンター 宇宙生命探査プロジェクト室 定塚グループ

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研究の概要

染色体構造と生物機能
 

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細胞の分裂に伴い、複製されたゲノムは正確に娘細胞に分配される。顕微鏡で観ると太い棒状の染色体が現れ、両極に分配されていく様子を観ることが出来る。しかしながらわずか2nmの細いDNAファイバーが、光学顕微鏡で容易に観察できる巨大な染色体へどのようにして構築されるのか、その詳細は分かっていない。我々は出芽酵母を真核生物のモデル系として染色体構築機構と、その構造が生物機能のために果たす役割について研究している。

染色体構造とゲノム安定性

分裂期染色体を構成する主要なタンパク質としてカエルから同定されたコンデンシンは、複数のサブユニットからなるタンパク質複合体で、酵母からヒトに至るまで広く保存されている。出芽酵母でコンデンシン変異体は、リボソームRNA遺伝子(rDNA repeat)領域の分配に異常が観られた。さらに、rDNA repeatの長さがコンデンシン変異体で顕著に短くなる特徴を見出した。リピート内での組換えが著しく上昇してコピー欠失が頻繁に起きている。Rad52等の組換え酵素は通常、rDNAが局在する核小体には進入せず、それ故リピートの安定性が維持されているが、コンデンシン変異体では、染色体凝縮が始まる分裂期に入るとRad52が核小体に侵入する様子が観察される。コンデンシンにより適正な染色体構造をとることで、組換え系のアクセスを抑制して、リピートの安定性の維持することにも貢献しているようだ。

コンデンシンのクロマチンへの作用

出芽酵母では、多くのコンデンシンが核小体に集中している様子が顕微鏡で観察できる。我々は、核小体に局在するrDNAリピートの中の特定の配列(RFB)にコンデンシンが結合することを見出した。また遺伝学的手法により、コンデンシンとRFBが結合するために必要な4種のタンパク質を特定し、その結合機構と染色体構造形成における役割を研究している。

RFBをゲノムの任意の場所に挿入しても、そこにコンデンシンを結合することができる。すなわち複数のRFBを染色体上に並べると、そこにコンデンシンの結合を制御できることが分かった。この系を利用して、コンデンシンがクロマチン繊維をいかに折り畳んでいるのか、分子レベルで謎の解明を目指している。

放射線やプラズマが細胞に与える影響

宇宙には生命にとって有害な高エネルギーの放射線が飛び交い、空間にある希薄なガスは電離したプラズマ状態になっている。放射線はDNAに重大な影響を及ぼすことが調べられてきているが、染色体が密に折り畳まれることにより、それに抗うことが出来るのだろうか?染色体構造を変化させた細胞を使って研究している。またプラズマが細胞にどの様な影響を及ぼすのか?大気圧低温プラズマを用いることで、細胞にどの様な影響を及ぼし、そこに関わる遺伝子の探索にも取り組んでいる。
 

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図1. コンデンシン変異体における核小体へのRad52局在
分裂期(metaphase)の細胞で核小体構成成分であるNop1をmCherry, Rad52をGFPで観察した。コンデンシン変異体(ycs4-1)ではRad52の緑のシグナルが核小体(赤)に侵入して黄色くなっている様子が観える。

研究室関連資料

参考文献

Johzuka, K., Horiuchi, T. (2009). The cis element and factors required for condensin recruitment to chromosomes. Mol. Cell 34, 26–35.
 
Johzuka, K., Horiuchi, T. (2007). RNA polymerase I transcription obstructs condensin association with 35S rRNA coding region and can cause contraction of long repeat in Saccharomyces cerevisiae. Genes Cells 12, 759–771.
 
Johzuka, K., Terasawa, M., Ogawa, H., Ogawa, T., and Horiuchi, T. (2006). Condensin loaded onto the replication fork barrier site in the rRNA gene repeats during S phase in a FOB1-dependent fashion to prevent contraction of a long repetitive array in Saccharomyces cerevisiae. Mol. Cell. Biol. 26, 2226–2236.
 
Johzuka, K., Horiuchi, T. (2002). Replication fork block protein, Fob1, acts as an rDNA region specific recombinator in S. cerevisiae. Genes Cells 7, 99–113.

連絡先

定塚勝樹(じょうづか かつき) E-mail: kjozuka@nibb.ac.jp TEL: 0564-55-7692

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