2018.02.07 基生研セミナー
極東酵母の微小管日記 "Microtubule diary from far (y)east"
登田 隆(広島大学大学院 先端物質科学研究科 分子生命機能科学専攻)
2018年02月07日(水) 16:00 より 17:00 まで
明大寺地区1階 会議室 (111)
幹細胞生物学研究室 坪内 知美 (7693)
生物は正確無比な染色体複製・分配を伴う細胞分裂を繰り返し、その結果、ほぼすべての細胞で染色体/DNAに刻まれたゲノム情報が安定に保持される。この高精度ゲノム安定性機構は生命活動・生物種維持に必須である。真核生物では、複製されたゲノム情報はチューブリン分子の重合体である微小管からなる分裂装置、すなわち双極性紡錘体によって、2つの娘細胞へ均等に分配される。
細胞内で微小管が正常に働くためには、チューブリンのみならず、一群の微小管結合タンパク質(Microtubule-Associated Proteins, MAPs)が重要である。数あるMAPsの中で、微小管上をATPase依存的に動くキネシンモーター分子は、微小管構築・機能に必要不可欠であり、その活性異常は、癌化・神経系不全・繊毛病など重篤なヒト疾患を引き起こす。
本年は微小管構成タンパク質が、毛利秀雄博士によりチューブリンと命名されてから50年目の節目を迎えた。また演者が大学院時代にチューブリン遺伝子を酵母ではじめてクローニングしてから、30年が経過した。本講演では、演者の微小管研究の端緒から、キネシンモーターに関する最新の成果まで概観する。また聴衆の多様なキャリア・バックグラウンドを考慮し、演者の研究者としての生い立ち・研究職履歴など個人的体験談も合わせて紹介させていただきたい。