2004.07.22 基生研セミナー
DNAの損傷に対する細胞の応答機構;大腸菌から真核生物へ
品川日出夫 (大阪大学・微生物病研究所・遺伝子生物学分野・教授)
2004年07月22日(木) 16:00 より 17:30 まで
明大寺地区1階会議室(111)
遺伝子発現統御第二部門 堀内 嵩 内線7578 kishori@nibb.ac.jp
大腸菌においてはDNAの損傷に対する主要な応答機構はSOS応答である。SOS制御を受ける遺伝子として, 組換え関連でrecA, ruvAB, recN, recQ (?)、DNAポリメラーゼとしてumuDC, polB、除去修復遺伝子としてuvrABなどがある。RuvABタンパク質はRecAタンパク質などの働きで形成された組換え中間体Holliday構造に作用して、分岐点移動を行わせるモータータンパク質である。RuvCタンパク質はHolliday分岐点を切断して組換え中間体を分離して、組換え反応を完了させる構造特異的なエンドヌクレアーゼである。RuvABCタンパク質による組換えの後期過程の反応機構について遺伝学、生化学、構造生物学による解析の成果について報告する。
真核生物での組換え修復の機構を解析するために、分裂酵母を材料にして、ユニークなミュータントの分離法を考案して多数の新規遺伝子を得た。特にfdh1遺伝子はSCFユビキチンリガーゼの基質認識サブユニットのモチーフであるF-boxをもつDNA ligaseをコードし組換え修復の後期に働く。F-box タンパク質はリン酸化したタンパク質を認識してユビキチン化しプロテアゾームで分解すると考えられている。
上記の方法で分離されたrad60,rad62,nse3遺伝子は機能解析があまり進んでいないSMC5/6(Structure Maintenance of Chromosome;染色体の対合に関与するcohesin,凝縮に関与するcondensinなどの仲間)と相互作用し同じ機能に関与している。これらは生存に必須であり、組換え修復に関与し、複製フォークの安定性の維持に重要な働きをしている。SMC5/6複合体は損傷に応答して、タンパク質のリン酸化、ユビキチン化、sumo化などを介して機能調節を受けている。真核生物のDNA損傷応答には翻訳後修飾が重要である。