2017.02.23 部門公開セミナー
ヤツメウナギの視覚系の発生と運動制御〜脊椎動物の視覚の進化的起源〜
鈴木 大地 (Karolinska Institutet, Department of Neuroscience)
2017年02月23日(木) 14:00 より 15:00 まで
山手3号館2階西 共通セミナー室
神経行動学研究部門 東島 眞一 (5875)
脊椎動物の精緻な視覚は、節足動物や頭足類(イカ・タコなど)とは独立して、脊椎動物の共通祖先で進化したと考えられている。脊椎動物のbasal groupである円口類にはヌタウナギとヤツメウナギがいるが、ヌタウナギの視覚系は二次的に退化している。一方でヤツメウナギは独特な二段階的視覚発生を示す。すなわち、眼点のような未発達な眼をもつ幼生から、変態を経てカメラ眼をもつ成体となる。これは他の脊椎動物には見られない視覚発生様式である。したがってヤツメウナギは、系統的位置という点でも、独特な視覚発生という点でも、脊椎動物の視覚の進化的起源を明らかにするための鍵となる動物である。そこで本セミナーでは、演者らによるヤツメウナギ視覚系についての研究成果を紹介する。前半では、進化発生学的なアプローチからヤツメウナギの視覚発生について研究した結果を紹介する。まずヤツメウナギの一次視神経の視覚中枢と、脊椎動物の原始的な形態を示すと考えられている無脊椎動物、ナメクジウオの視覚中枢との類似性を示す。そしてヤツメウナギの一次視覚系は、負の光走性をもたらす単純な視覚回路となっている可能性を推測する。後半では神経生理学的なアプローチから、ヤツメウナギ成体の視蓋における運動制御についての研究を紹介する。眼−脳−脊髄標本を用い、スクリーン上の視覚刺激に対する脊髄腹根の応答を細胞外記録した。その結果、特定の視覚刺激に対し特定の指向/忌避反応が誘発されるらしいことが判明した。これについて、演者が所属する研究室での先行研究(Kardamakis et al. 2015, 2016)をふまえながら、ヤツメウナギ成体視蓋の神経回路について議論する。最後に前半と後半の議論を統合しながら、脊椎動物の視覚系の進化的起源について検討する。