2015.07.23 部門公開セミナー
ショウジョウバエ新規ペプチドホルモンCCHamide-2による栄養条件と成長の協調的制御
佐野 浩子(久留米大学 分子生命科学研究所)
2015年07月23日(木) 14:00
山手3号館2階西 共通セミナー室
生殖細胞研究部門 吉田松生(5865)
個体の成長を栄養条件と協調させることは、動物の生存に必須である。高等動物では、栄養はおもに、脂肪体や腸管などで感知される。これらの情報を受け取った脳が、末梢器官にフィードバックすることにより、体内の様々なシステムが適切に制御される。内分泌ホルモンは、このような臓器間コミュニケーションにおいて重要な役割を持つことが知られている。私たちは、末梢器官—脳の情報伝達を担うショウジョウバエの新たなペプチドホルモンCCHamide-2 (CCHa2) およびその受容体が、栄養条件と成長の協調に重要なはたらきを持つことを明らかにした。
CCHa2は、13アミノ酸から成るペプチドであり、幼虫の脂肪体や腸管で発現する。CCHa2の受容体であるGタンパク質共役型受容体CCHa2-Rは、脳で発現し、特にインシュリンを分泌する神経内分泌細胞で強い発現が見られた。カルシウムイメージングおよびインシュリン産生細胞特異的なCCHa2-Rの阻害により、CCHa2はインシュリン産生細胞を直接活性化することが明らかになった。CCHa2およびCCHa2-Rの機能欠失型変異体では、幼虫の成長阻害および発生の進行の遅れが見られたが、これらの変異体では、インシュリン様ペプチドをコードするDilp2やDilp5の産生や分泌が阻害されていることが明らかになった。これらの結果は、CCHa2およびCCHa2-Rは、末梢器官と脳をつなぐ内分泌ホルモンであり、インシュリン様ペプチドを介して個体の成長を制御することを示している。さらに興味深いことに、CCHa2の発現は、栄養依存的であり、グルコースの添加で著しく発現が増大した。このことから、CCHa2シグナル系の生理学的意義は、個体の成長を栄養条件と協調的に制御することであると考えられる。