2011.06.22 部門公開セミナー
機能不全リボソームの分解におけるユビキチン-プロテアソーム系の役割
藤井 耕太郎 (京都大学 ウイルス研究所 遺伝子動態調節部門)
2011年06月22日(水) 16:00 より 17:00 まで
山手地区3号館2階共通セミナー室
小林研 林 良樹 内線5876
真核生物は遺伝子発現を正常に保ち、細胞内の恒常性を保つため、多様なRNA品質管理機構を備えていることが明らかになりつつある。細胞内には様々なRNA種が存在し、それぞれのRNA種に対して異常RNAを認識し、分解する品質管理機構が存在する。数多くのRNA種の中でわれわれはリボソームを構成するribosome RNA (rRNA)に着目した。rRNAは周囲を多くのリボソームタンパク質で覆われ、半減期が100時間以上(培養細胞)と非常に安定である。そのように安定なrRNAも活性中心塩基に変異を持つために機能不全になった場合には、成熟リボソームに取り込まれた後、速やかに分解される。この現象はNonfunctional rRNA Decay : NRD と名付けられた(LaRiviere et al.,2006)。
われわれのグループも独自にNRDの現象を発見しており、60SサブユニットのRNA成分である25S rRNAのNRDの分子機構を解明しようと研究を行ってきた。25S NRDに関与する因子を同定するために、出芽酵母ノックアウトライブラリー(YKO)および必須遺伝子の発現を抑制するtet-offライブラリー(yTHC)を用いてスクリーニングを行った。スクリーニングの結果、E3ユビキチンライゲース複合体、およびAAA –ATPaseであるCdc48複合体、プロテアソームが25S NRDに必要であることが明らかとなった。生化学的解析の結果、機能不全リボソームが選択的にユビキチン化されること、およびプロテアソームによるタンパク質の分解がRNA成分の分解に必須であることが分かった。リボソームの60Sサブユニットは3種類のrRNAが60種類のタンパク質で覆われた、非常に安定な複合体である。今回の結果からこのように安定な複合体の解体におけるユビキチン-プロテアソーム系の役割を議論したい。最後に、最近になって明らかになった興味深い知見として、内在性のリボソームに対してもユビキチン-プロテアソーム系が常に働いてストレスに応じた様々なユビキチン化を行っているという結果を示したい。
[参考文献] Fujii, K., et al, Genes & Development, vol. 23, 963-974, (2009),