2004.08.13 部門公開セミナー
シロイヌナズナを用いたサイレンシング機構の解析
菅野達夫 (Gregor Mendel Institute of Molecular Plant Biology, Vienna, Austria)
2004年08月13日(金) 15:00 より 16:30 まで
明大寺地区1階会議室(111)
分子遺伝学研究部門 飯田 滋 内線7680 shigiida@nibb.ac.jp
遺伝子のプロモーター領域を含む2本鎖RNAによって,それと塩基レベルで相同性を持つプロモーターに依存する遺伝子の発現が転写レベルで抑制されることおよびそのプロモーター領域にde novoのメチル化が生じることが報告されている.2本鎖RNAの分解産物である約21~25塩基のsmall RNAがこれら転写レベルの遺伝子の不活性化およびDNAのde novoのメチル化に関与することが知られているが,分子機構の解明には至っていない.
発表者は,モデルプロモーターによって転写されるレポーター遺伝子のレポーター活性が,別のプロモーターによって転写されるモデルプロモーターのヘアピンRNAによって不活性化されるtransgenicシロイヌナズナの系を確立し,RNAに依存する転写制御による遺伝子の不活性化の分子機構の解明を遺伝学的手法を用いて進めている.
EMSにより変異処理を行い,レポーター遺伝子の再活性化を指標としたスクリーニングの結果,異なる相補群に属する3つの変異株,drd1, drd2, drd3 (defective in RNA-directed DNA methylation)を得た.これら3つの変異株では,ターゲットとなるプロモーター領域においてCpG配列以外(CpNpGおよびCpNpN)のシトシンの脱メチル化が観察されたが,centromeric repeatあるいはrDNA repeatにおけるメチル化に変化は見られなかった.このことから,これら変異株の原因変異遺伝子産物はゲノムワイドに機能を持つものではなくRNAシグナルによるターゲットDNAのde novoのメチル化の機構に何らかの機能を持つものと考えられた.
マッピングによりDRD1遺伝子を同定したところ,その遺伝子産物はSWI2/SNF2-like protein群の中でPlant specific subfamilyを形成するputative chromatin remodeling factorの1つであることがわかった.
本発表では,drd変異株の解析から得られたRNAシグナルに依存する遺伝子の不活性化の機構に関する知見を紹介する予定である.