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大学共同利用機関法人 自然科学研究機構

基礎生物学研究所

研究所概要

所長挨拶

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2021年1月 所長室にて撮影
広報室で作った<プラナリアぬいぐるみ>と教え子たちから還暦の時にプレゼントされた<DNAネオン>(安彦哲男氏作)

わくわく感のある生物学の醸成


博物学から生じた『生物学』は近年のゲノム科学と融合することで、サイエンスの醍醐味を身近に味わえる学問へと大きく変貌を遂げました。すなわち、地球上の生物は、全てがDNAという分子を遺伝物質として進化したことで、地球環境のダイナミックな変化に応じてその姿を変えてきたことがわかり、進化を再現することも、進化の時計を巻き戻すこともできる『生物学』が可能になったのです。さらに、宇宙に人類が進出するようになると、宇宙環境に適した生物をデザインして宇宙に送り込むことすら可能な時代へとなったのです。

基礎生物学研究所は「生き物研究の世界拠点」として、動物や植物などのモデル生物や新規モデル生物、ひいては非モデル生物を用いて、すべての生物に共通で基本的な仕組み、生物が多様性をもつに至った仕組み、及び生物が環境に適応する仕組みを解き明かす研究を、国内外の研究者と連携して行っています。質の高い実験生物を生育し、高度で精密な解析を可能にするために、「モデル生物研究センター」と「生物機能解析センター」と「新規モデル生物開発センター」を整備し、全国の生物研究者が共同利用・共同研究でフロントのサイエンスを展開できる支援体制を作っています。また、災害などにより研究上貴重な生物遺伝資源が失われることを防ぐ「大学連携バイオバックアッププロジェクト」の中核拠点(IBBPセンター)としての活動もしています。このように基礎生物学研究所は、大学共同利用機関として国内外の大学や研究機関の研究者とともに、わくわく感のある生物学の醸成を行っています。


基礎生物学研究所長 阿形 清和

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2019年4月 岡崎3研究所の正面ゲートにて撮影

所長雑感(その1) : 生物学者の挑戦


コロナ禍によって、人類はあらためて<生物の世界>の奥深さを知ることになりました。すべての地球上の生命は核酸を遺伝子としてもった子孫であり、ウィルスを含め生命みな兄弟であることを思い知らされ、ついにはRNAワクチンなるものまでが登場しました。感染の拡大の予測は生態系のシミュレーションそのものであり、ペットを介した感染が係数に組み込まれるようになると、より複雑なシミュレーションが負荷されることになります。

隕石落下による大規模な地球環境の変動・感染症の拡大など、ありとあらゆる困難に遭遇しても、核酸をベースとした生命はそれらの困難をかいくぐって現在に至っています。どのようにしてかいくぐってきたのか? そこには、多様な遺伝子変異の蓄積があり、変動する環境に耐えられる遺伝子をもった生命だけが生き残り(自然選択され)、やがてそれが<進化>という生命現象として語られるようになったのです。

われわれ生物学者は核酸を定量するのに紫外線の吸光度で測ります。なんで紫外線に最大吸収波長をもつものが遺伝物質なの? それってヤバクない? いや、紫外線で変異して多様性を作れたから、核酸を遺伝子とした生命体が進化できたのでないのでしょうか。

また、核酸は変異するだけではなく動くことができます(一部のウィルスは感染しては宿主のゲノムに潜り込む)。ヒトのゲノムの中にも膨大な量のウィルス由来の遺伝子が組み込まれており、それらのウィルス由来の遺伝子が悪さもする一方で脳や胎盤の進化をもたらしたこともわかってきました。

そういった意味で、生物学者は<多様性の重要性>を一番理解している地球上の生命体なのです。<多様性の形成と自然による選択>によって進化が行われてきたことを生物学者はもっと語らなくてはいけません。<多様性>はきれい事として語るものではなく、進化する生物にとって<不可欠なもの>として語らなくてはいけません。生物学者の挑戦は続きます。


2021年1月26日
基礎生物学研究所長 阿形 清和