平成23年4月に24件の公募研究課題が採択されました。

非コードRNAに制御されるヘテロクロマチン形成場の解析

研究代表者:村上 洋太 (北海道大学理学研究院・教授)

murakami.jpgヘテロクロマチンは染色体機能・維持に重要なクロマチン構造です。興味深いことに酵母からヒトまでヘテロクロマチンは核膜近傍に局在していますが、その意義や局在機構は明らかではありません。分裂酵母のヘテロクロマチンは非コードRNA転写とそのRNAからRNAi機構により合成されるsiRNAに依存しています。我々は非コードRNAが鋳型DNAとハイブリッドを形成しRNAi機構の「足場」となること、また核膜に存在する新規蛋白質Dsh1がRNAiに依存するヘテロクロマチン形成に必須であることを見いだしています。これらの知見をもとに、非コードRNAに制御されるヘテロクロマチン形成場が核膜内面近傍に存在し、その場の構築・機能にDsh1およびDNA:RNAハイブリッドが重要であるとのモデルをたてています。本研究では、そのモデルの妥当性の確認と分子基盤の解明を目指します。

研究室HP

クロマチンの機能場形成と核内空間配置におけるアクチン関連タンパク質の役割解明

研究代表者:原田 昌彦 (東北大学大学院農学研究科・准教授)

HarataMasahiko.jpg真核生物のゲノムの収納・発現・維持に関わる細胞核は、高度に組織化・区画化されたダイナミックな構造体である。クロマチンの構造に加え、核内空間への収納が遺伝情報の発現制御・維持継承における重要な分子基盤であり、発生分化・疾病・環境対応に伴い核内構造も変化する。しかし、核構造形成(クロマチン機能場、染色体テリトリー、クロマチン空間配置、核内構造体など)の基本原理やメカニズムには不明な点が多い。申請者はこれまでに細胞核に局在するアクチン関連タンパク質 (actin-related protein; Arp)の存在を見出し、これらの核内Arpが核構造形成に関与することを報告した。本研究では、核内部の「空間」の構築と、分化・環境変化に伴う細胞核の「時系列」変化における核内Arpの機能を明らかにし、核構造構築の分子基盤とそのダイナミクスに関する新規な知見を得ることを目的とする。

核小体因子を介したM期染色体ダイナミクスの制御

研究代表者:木村 圭志 (筑波大学大学院生命環境科学研究科・准教授)

kimuraKeiji.jpg核小体は、リボソームRNA(rRNA)の転写とリボソーム合成の場として知られていたが、近年の研究から、細胞周期制御を含めた多くの細胞機能に関与することが示唆されつつある。分裂期には、rRNAや多くの核小体構成タンパク質が染色体周辺に集積し、染色体の動態に関与することが報告されている。しかし、その分子メカニズムは多くは知られていない。我々は、核小体タンパク質のsiRNAライブラリーを作製し、いくつかの因子が細胞周期の制御に関与することを見出した。さらに、染色体の周辺にはrRNAが局在し、それに依存していくつかの核小体タンパク質が結合すること、rRNAの存在が正常な染色体構造に必要であることを見出した。これらの結果は、rRNAが核小体タンパク質を染色体に結合させる「場」としての役割を持つことを示唆している。そこで、本研究ではrRNA依存的に染色体に結合する因子を網羅的に探索し、それらの因子による染色体動態制御機構を詳細に解析することを目的とする。

マイクロ流体デバイスを用いたクロマチンファイバーの個別操作・動態解明

研究代表者:小穴 英廣 (東京大学大学院工学系研究科機械工学専攻・准教授)

OanaHidehiro.jpg本研究課題においては、蛍光顕微鏡下、溶液組成制御が可能なマイクロ流路チャンバー内で、分裂酵母スフェロプラストから単離した全長100 μm を超える長大なクロマチンファイバーをインタクトな状態で個別操作し、周囲の溶液環境変化に応答したクロマチンファイバー高次構造変化を逐次的に調べることで、階層的な高次構造間の動態を、ファイバーに沿った空間的位置情報も含めて明らかにすることを目的とする。
 これまでに、マイクロ流路チャンバー内における、分裂酵母スフェロプラストからのクロマチンファイバー単離および、流路内に設けたマイクロ構造体へのクロマチンファイバー固定を達成している。今年度以降は、マイクロ流路内に固定したクロマチンファイバーを実験対象とし、周囲の溶液組成を変えた際の高次構造変化をリアルタイム観察し、動態を解明することに重点的に取り組むと共に、クロマチンファイバーと核膜タンパクとの相対位置についても研究を行うことを計画している。

研究室HP

クロマチンー核膜インターフェース複合体による核の構造・機能制御

研究代表者:岩渕 万里 (名古屋大学 理学研究科 生命理学専攻)

Iwabuchi.jpg動物の初期胚、脱分化細胞やES細胞などの未分化な細胞の核は、サイズが大きい、物理的可塑性が高いなどの構造的特徴をもつことが知られているが、このような構造的特徴が核の機能とどのように関連するのか不明である。私達は、ツメガエル初期胚細胞の核をモデル系とし、核膜とクロマチンの連結の制御に着目して研究を進めている。ツメガエル初期胚の細胞核は、分化した細胞の核とはクロマチンや核膜を構成するタンパク質が大きく異なることが知られている。本研究では、核内膜タンパク質、ラミン、クロマチンタンパク質からなる複合体(クロマチン-核膜インターフェース)の構成分子に着目し、初期胚型核の構造構築に関わる分子を明らかにし、インターフェースが細胞分化の制御に果たす役割を明らかにしたい。

研究室HP

生殖細胞の減数分裂に伴うゲノム制御転換とシグナル応答のシステム解析

研究代表者:中馬 新一郎 (京都大学・再生医科学研究所・准教授)

chuma.jpg生殖細胞は発生初期に多能性幹細胞から体細胞と系譜が分かれ、配偶子形成過程を通じてゲノム情報の継承、エピゲノム修飾の再構成を行い、次の個体発生の為の遺伝プログラムを確立する。幹細胞-生殖細胞サイクルにおけるゲノム-エピゲノムプログラムは個体及び種が成立する根幹として厳密に制御される一方、減数分裂期には逆に相同遺伝子組換えとゲノム半数体化により遺伝情報を再編して多様性を生むメカニズムが働く。本研究ではマウス生殖幹細胞株が培養下で体細胞型増殖から第1減数分裂前期へ移行する培養実験系を用いて、(1)生殖幹細胞から減数分裂移行に伴うゲノム、エピゲノム動態、(2)減数分裂誘導のシグナル経路と核動態のクロストーク、の解明を目指してプロテオーム、トランスクリプトーム等によるdata-driven型研究と個別の分子、経路の機能解析を進め、哺乳類減数分裂の遺伝情報場の初期成立プロセスを明らかにする事を目指す。

研究室HP

挿入的クロマチン免疫沈降法によるエピジェネティック制御機構の解明

研究代表者:藤井 穂高 (大阪大学・微生物病研究所・准教授)

fujiih01.jpgエピジェネティック制御機構の解明には、その領域に結合してエピジェネティック制御を行っている分子の同定と機能解析が必須です。本研究では、私たちが開発した挿入的クロマチン免疫沈降法 (insertional chromatin immunoprecipitation: iChIP) を用いて、特定ゲノム領域にin vivoで結合している分子(DNA、RNA、蛋白質等)を同定し、その機能解析を行います。iChIP法を用いたエピジェネティクス解析の例として、インスレーター複合体構成分子の網羅的同定とその機能解析を試みます。また、ゲノム中に1コピーもしくは2コピーしかない遺伝子座のエピジェネティック制御機構の解析が行えるよう、iChIP法の最適化を行います。こうした研究によって、「遺伝子座特異的生化学的エピジェネティクス解析」という新しい研究手法の確立を目指します。

研究室HP

クロマチン構造変化による細胞運動調節機構の解明

研究代表者:檜枝 美紀 (大阪大学大学院医学系研究科・特任助教)

hieda.jpg細胞は自ら動く能力を持っており、これは多くの生命現象に必須の細胞機能である。細胞が方向性を持った運動をするためには、細胞極性の適切な形成が重要である。これまでの研究では、細胞核は細胞の運動に伴い受動的に牽引されていくと考えられており、細胞核の細胞運動に対する積極的な役割は知られていない。これに対して、私達はクロマチン構造に大きく影響を与えるヒストンH3の9番目のリジン残基(H3K9)のトリメチル化を阻害すると、細胞極性の形成が異常になり細胞運動が抑制されること、また細胞運動を誘発するような刺激により、H3K9のグローバルなトリメチル化が亢進することを見出してきた。これらの結果は、細胞核が細胞内外の情報を統合して細胞運動を調節していることを示唆している。本研究では、クロマチン構造がどのように細胞運動を制御しているのか、その分子メカニズムを明らかにしていきたい。

発生をすすめる転写制御因子複合体の核内ダイナミクス

研究代表者:近藤 寿人 (大阪大学・生命機能研究科・教授)

Kondoh2.jpg 発生をすすめる転写制御因子は、胚発生や細胞分化の各段階で、特定の制御標的遺伝子群の制御領域に結合して、その遺伝子群をセットとして活性化、あるいは抑制する。
 これらの転写制御因子は多くの場合、他の転写制御因子との複合体を作って制御標的に作用する。また、核の中に存在する個々の転写制御因子には、作動状態のものと非作動状態のものとがあると予想される。これらの転写制御因子が全体として、遺伝情報場としての核の中で、どのような分子過程のもとで制御機能を発揮するのか?この問に答えるべく本研究では、Sox2、Pou因子群、Pax6など、着床後の胚発生の制御に中心的な役割を持つ転写制御因子の核内ダイナミクスを研究する。転写制御因子と蛍光蛋白質との融合蛋白質を活用して、光刺激後の局所的な蛍光強度の変化を計測し(FDAP/FRAP)、その時定数の違いをもとにして、個々の分子過程を識別しつつ分析する。

研究室HP

遺伝情報場解析のためのヒストン修飾酵素蛍光可視化プローブの開発

研究代表者:堀 雄一郎 (大阪大学大学院工学研究科・助教)

horiyuichiro.jpgヒストンに存在するリジン残基のメチル化/アセチル化及びその逆反応である脱メチル化/脱アセチル化は、遺伝子の転写制御に関与する重要な修飾反応であり、その異常は発癌の大きな要因となる。このため、これらの修飾反応に関わる酵素の活性を検出することは、遺伝情報の発現やその異常に伴う病態を理解するうえで極めて重要である。
我々は、上記の修飾酵素のうち、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)及びヒストンデメチラーゼ(KDM)に着目し、これらの酵素活性を蛍光強度の上昇により捉えることのできるプローブを化学原理に基づいて開発している。この化学プローブに基づき、遺伝情報発現のためのヒストン修飾を蛍光検出することで可視化することを目指している。

研究室HP

RNAポリメラーゼIIによる転写の場のダイナミクス

研究代表者:木村 宏 (大阪大学生命機能研究科・准教授)

KimuraHiroshi.jpgRNAポリメラーゼIIは、転写開始時にその最大サブユニットのC末端ドメインに存在するYSPTSPSの繰り返し配列中の5番目のSer残基 (Ser5)がリン酸化され、プロセッシブな転写伸長反応の際には2番目のSer残基(Ser2)がリン酸化される。昨年度までの研究により、こ れらのリン酸化に特異的な抗体を作成し、蛍光標識した抗原結合断片(Fab)を細胞に導入することで、生細胞内のリン酸化型RNAポリメラーゼ IIを検出することに成功した。本研究では、約200コピーの誘導可能な遺伝子アレイを染色体上に保持した細胞をモデル系として用いることで、転写誘導に伴うRNAポリメラーゼIIのリクルート、開始、伸長の速度論についての知見を得ると共に、転写の場の形成機構を明らかにする。

胚発生過程における遺伝情報場への分子輸送の時空間制御

研究代表者:安原(垣内) 徳子 (大阪大学大学院医学系研究科 生化学・分子生物学講座・特任助教)

YasuharaTokuko.jpg真核細胞の核内外への分子の出入りは核膜孔を介して行われる。小分子は拡散により核膜孔を通過するが、大きな分子はエネルギーを必要とする選択的な輸送により核膜孔を通過する。このような選択的な輸送を担うのが、輸送受容体を中心とした核―細胞質間分子輸送システムである。細胞が内外の環境変化に応じて、遺伝情報に基づいた適切な反応系を働かせるには核―細胞質間分子輸送が欠かせない。我々はこの輸送システムが、ほ乳類幹細胞の分化の過程で転写因子の輸送制御を通し、細胞の運命決定の一端を担うことを明らかにした。本研究では、核―細胞質間分子輸送システムがほ乳類の初期胚発生において、いつ、どのような分子を流通させるか解析する。平成21~22年度に採択された、当新学術領域・遺伝情報場の公募研究では、輸送受容体のひとつがblastsyst以降に特異的な発現パターンを示すことを見出し、かつその発現が正常な胚発生に必要不可欠である手がかりを得ている。また、この輸送受容体に、特定の積荷蛋白質の核輸送を阻害する新規機能があることを発見した。今後は、特に遺伝子発現制御に関わる機能性分子に焦点を当て、輸送の時空間制御を明らかにする。これにより、核―細胞質間分子輸送による遺伝情報場への情報伝達制御の視点から、発生・分化のメカニズムに迫る。

研究室HP

細胞核の形態・構造と力学的特性の統合的解析および細胞核内外の力学場の解明

研究代表者:宮崎 浩 (大阪大学・基礎工学研究科・准教授)

Miyazaki-photo.jpg細胞の遺伝情報の発現には、細胞と細胞核のメカニクスが関与する。したがって、遺伝子発現の詳細を理解するためには、細胞核内外の力学場を把握する必要があるが、その詳細は明らかにされていない。細胞核内外の力学場は、細胞の力学的特性と、その細胞の核の力学的特性をともに計測し、形態・内部構造とリンクさせて解析しなければ理解出来ない。本研究では、細胞および細胞から単離した細胞核の力学試験を行い、それらの全体的および局所的力学的特性を詳細に計測するとともに、共焦点レーザ顕微鏡による細胞および核の形態・構造観察を行う。また、細胞の接着・伸展に伴う細胞と細胞核の形態・構造および力学的特性の変化や、主要な細胞内力学要素である細胞骨格や核ラミナが細胞核の形態と力学的特性に及ぼす影響を明らかにしていく。さらに、細胞および細胞核の構造・形態データと力学データの統合的解析により、細胞核内外の力学場の解明を目指す。

研究室HP

ニューロン成熟過程におけるゲノム核内配置と転写制御機構の解明

研究代表者:滝沢 琢己 (群馬大学大学院医学系研究科小児科学分野・准教授)

TakizawaTakumi.jpg核内でのゲノム空間配置は転写制御に密接に関連している。昨年度までに神経幹細胞の分化過程におけるDNA脱メチル化と遺伝子座会合に関する研究に取り掛かり、現在ゲノムワイド解析に取り組んでいる。今年度からは、ニューロンの成熟過程でのゲノム空間配置の解析を行う。ニューロンは、最終分裂後の成熟過程で劇的な形態変化を呈し遺伝子発現プログラムも大きく変動するが、この際のゲノム空間配置の知見は乏しい。そこで本研究では、マウス海馬ニューロンの成熟過程において発現変化する遺伝子が集簇する染色体、あるいは染色体内ドメインを同定し、DNA FISHにて核内配置の変化を検討することで、ニューロン成熟過程でのゲノム核内配置変動を明らかにしたい。さらに、成熟に依存して発現が変化するクロマチン関連分子をノックダウンし、ゲノム配置への影響を検討し、ゲノム核内配置変化の分子機構を解明したい。

情報場への摂動を緩衝するメカニズムの解明

研究代表者:守屋 央朗 (岡山大学異分野融合先端研究コア・准教授(特任))

Moriya.JPG遺伝子発現機構に存在するゆらぎや変異などは、遺伝情報が機能(蛋白質)へと正確に結びつくことを邪魔する。一般的にロバストな生命のシステムには、情報場への摂動が機能に直接影響を与えないようにするための緩衝作用が多数存在していると考えられる。しかし、このような緩衝機構は、これまでは個別研究の偶然による発見を待つほかなかった。本研究では、酵母の細胞周期制御遺伝子のコピー数が変動したとき、それが生命システムによってどのように緩衝されているのかを、遺伝子綱引き法を中心とする測定実験により明らかにし、分裂酵母細胞周期制御に存在する緩衝機構の全容を解明することを目標とする。また、本研究で明らかになった緩衝機構は、予測制度の高い統合的数理モデルの実現に貢献する。

研究室HP

スモ修飾システムとクロマチン再構成による修復場形成制御機構の解明

研究代表者:田代 聡 (広島大学原医研細胞修復制御研究分野・教授)

tashiro.jpgゲノム修復は、遺伝情報場の安定性、継続性を維持することにより細胞死やがん化を防ぐために重要なシステムである。ゲノム修復関連蛋白質は、ゲノム損傷部位周辺に核内高次構造体を形成することが知られている。しかし、損傷部位でのクロマチン構造変換が核内ドメイン形成にどのように関与しているかについては未だ不明な点が多い。申請者は、相同組換え修復蛋白質RAD51が損傷部位に核内高次構造体を形成するために、蛋白質翻訳後修飾SUMO化システムが必要であることを示す知見を得た。一方、酵母では、ヒストンH2AZのSUMO化修飾が、RAD51とともにゲノム修復に必要であることが報告されている。本研究では、ヒト細胞のゲノム修復におけるRAD51の機能制御におけるH2AZの放出を含めた損傷依存的なクロマチン再構成とSUMO化修飾システムの役割を検討することにより、ゲノム修復「場」の制御機構の解明に取り組む。

研究室HP

機能性クロマチンモデルとしての人工遺伝子制御システムによる遺伝子転写調節概念

研究代表者:片山 佳樹 (九州大学大学院工学研究院応用化学部門・教授)

KatayamaYoshiki.JPG本研究では、我々がこれまで開発してきた、ペプチド-高分子コンジュゲートを基盤とした人工クロマチンモデルを用いて、遺伝子の転写制御に関わるDNAの物理化学的因子を明らかにすることを目的としている。本人工クロマチンモデルは、プロテインキナーゼやヒストンアセチル化酵素など、標的翻訳後修飾により遺伝子の転写を活性化できる。これらのモデルを通した検討から、我々は、転写の制御はDNA鎖の熱運動を制御することにより、遺伝子が感じる温度を周囲の温度変化なしに変えることで反応を制御している可能性があると考えている。そこで、分子運動の制御による転写制御という新規な概念について、ゲノムでの転写制御、あるいは高次構造制御との関係を明らかにするとともに、さらに高効率に遺伝子を制御できる人工システムを開発する事を目的とする。

研究室HP

分化遺伝子選択における時空間制御機構の解明

研究代表者:大川 恭行 (九州大学 医学研究院 先端医療医学部門 エピジェネティクス分野)

OhkawaYasuyuki.jpg細胞が特定の細胞へと分化するには、ゲノム上に存在する2-3万もの遺伝子から分化特異的遺伝子が“選択”される必要がある。この遺伝子の選択的な発現制御メカニズムについては、クロマチン分野やエピジェネティクス分野の研究の進展により、DNAのメチル化、クロマチン構造変化、ヒストン修飾に至るまで詳細に解析されてきました。しかしながら、これらの研究は個別の遺伝子を対象とした研究のため、分化における一群の遺伝子が如何に選択されるのかという時空間的な制御機構の理解には至っていません。私たちは、この“発現遺伝子の選択”を明らかにするため、骨格筋分化をモデル系として遺伝子発現制御の各段階を遡って解析を行ってきました。これまでに、これまで知られている遺伝子発現制御機構の最も初期の現象は、複数の遺伝子の同調的な発現を可能にする遺伝子座近接現象(ジーンクラスタリング)であることを見出した。そこで、本研究では、分化細胞における一群の発現遺伝子がいかに選択されるのかをジーンクラスタリングの視点からゲノムワイドに解析し、個々の遺伝子発現を統合的に制御するメカニズムを明らかとすることを目的としています。特に、ジーンクラスタリングをゲノムワイドに解明することを目的に次世代シークエンサーを用いた3C-seq法をもとに、バイアスなしに遺伝子座の近接現象をゲノムワイドに観察することを目指しています。従来なされてきた局所的な個々の分化特異的な遺伝子発現の理解にとどまらない俯瞰的な細胞分化制御機構の解明を試みます。

研究室HP

画像解析を用いた染色体間ドメイン構築ネットワークの解析 

研究代表者:斉藤 典子 (熊本大学発生医学研究所・助教)

SaitoNoriko.jpg細胞核内は転写、複製、RNAのプロセッシングなどが、複雑な制御を受けながら起こることを反映して、高度に組織化されています。染色体間領域には様々な核内構造体が存在し、遺伝子と相互作用しながらゲノムの微小環境としてはたらき、遺伝子の機能制御に関わっていると考えられます。我々は、細胞核内構造を高次エピジェネティクス機構の一端と捉え、形成機構と機能を明らかにすることを目標のひとつとしています。もうひとつの目標は、画像解析技術を用いて、顕微鏡下で観察される細胞形態を定量的に解析することです。細胞核構造は様々な局面でダイナミックに変化し、がんを含む疾患では核異型と呼ばれる異常が見られ、病理診断にも頻繁に使われています。細胞核の形態を定量化・分類する技術を確立・検証し、客観的な計測システムを構築し、バイオイメージインフォーマティクスの確立に貢献したいと考えています。

研究室HP

新規ヒストンパートナーMlo2によるヒストン分子間相互作用ダイナミクス制御

研究代表者:田上 英明 (名古屋市立大学・准教授)

Tagami.jpg可塑的かつダイナミックなクロマチン高次構造制御の理解は、遺伝情報場におけるゲノム・エピゲノム情報の形成、維持、変換の分子基盤となると考えられます。本研究においては、新規に見出したMlo2(HiTAP1)によるヒストンH3/H4の解離活性という制御システムに焦点を当て、その分子メカニズムと生理的意義の解明を目指します。HiTAP1-H3相互作用の分子メカニズムと染色体機能や細胞増殖との関連性や、ヒストン量やヒストン分子間のバランス制御について、解析を行います。さらに、様々な条件下におけるヒストン複合体スナップショット解析を推進することで、将来的にはエピゲノム制御複合体の機能ネットワークを包括的に理解することを目指します。

研究室HP

ヒストン脱メチル化酵素によるヌクレオソーム構造調節機構の解析

研究代表者:常岡 誠 (高崎健康福祉大学・薬学部・教授)

Tsuneoka.jpg真核生物のゲノムDNAは高度に折り畳まれ核内に収納されている。ヌクレオソームはその折り畳みの基本構造であり、転写等のDNAと関係する生命現象に関係する。近年、ヌクレオソームは能動的に移動・除去・再構成されうるダイナミックな構造であることが明らかとなり、その構造調節機構解明が生命現象の理解に不可欠となってきた。我々は核小体という場で行なわれるリボソームRNA転写調節について研究をおこなってきたが、最近リボソームRNA転写調節と関係するヒストン脱メチル化酵素がリボソームRNA遺伝子上でヌクレオソーム量を調節する可能性を見出した。本研究ではこの酵素によるヌクレオソーム量調節メカニズムの解明を行いクロマチン構造のダイナミズムの理解を深めたい。

研究室HP

細胞核の継承に重要な働きを担うセントロメアに特異的なクロマチン構造の解明

研究代表者:堀 哲也 (国立遺伝学研究所 分子遺伝研究部門・助教)

HoriTetuya.jpg細胞核の継承に重要な働きを担うセントロメアは、細胞核内において他の領域との明確な区分化が必要なため、セントロメアに特異的なクロマチン構造を持つと考えられています。セントロメアに特異的なヒストンH3のバリアントであるCENP-Aは、セントロメアを規定するクロマチン構成因子であると考えられています。しかし、CENP-Aのみでセントロメアに特異的なクロマチン構造は構築できず、このクロマチン構造の実体に関しては不明な点が数多くあります。そこで本研究では、セントロメアを構成するクロマチンを細胞から精製し、セントロメアに特異的なクロマチン構造の実体解明を行ないます。また培養細胞系において人工的にネオセントロメアを形成する実験系を構築し、セントロメア形成を促すために重要なクロマチン構造を明らかにしていきます。得られた知見を基礎に人工セントロメアの再構成を目指します。

ヌクレオソーム構造の自由エネルギープロファイル解析

研究代表者:河野 秀俊 (日本原子力研究開発機構・グループリーダー)

KonoHidetoshi.jpg遺伝情報の発現は、塩基配列と転 写装置のみならず、ゲノムDNAとヒストン蛋白質から構成されるヌクレオソームを構造単位とするクロマチンの化学的、構造的な修飾などによって制御(エピジェ ネティクス)されている。本研究では、基本構造であるヌクレオソームの立体構造にもとづいた計算機シミュレーションを行い、ヌクレオソー ムのポジション変化、DNAのメチル化、ヒストン修飾及びヒストンバリアントなどがもたらす遺伝情報場での物理化学的な変化を自由エネルギープロファイル の観点から調べる。得られたプロファイルの違いが、どのようなダイナミクスや分子間相互作用から生じるのか、また、具体的にどのアミノ酸 残基や塩基がそのダイナミクスや分子間相互作用(安定性など)の変化に重要であるかを明らかにしていきたい。

研究室HP

遺伝情報場形成に関わるテトラヒメナの選択的核輸送システムの解明

研究代表者:原口 徳子 ((独)情報通信研究機構 未来ICT研究所 上席研究員)

haraguchi.jpg核内に適切な遺伝情報場が形成されるためには、核タンパク質を選択的に核内に輸送するシステムは非常に重要な働きをすると考えられる。本研究は、遺伝情報場形成に関与する輸送システムを明らかにするために、一つの細胞内に機能と構造の異なる2つの核(大核と小核)を持つ繊毛虫テトラヒメナを用いて、大核と小核に特異的な核輸送システムを明らかにするものである。さらに、大核と小核の形成に必要な因子や細胞構造を同定し、遺伝情報の転写場(大核)と継承場(小核)の形成に必須な働きをする核輸送システムを同定したい。

研究室HP