領域の研究成果公表状況

主要な研究成果(2013年5月現在)>LinkIcongenofield_achievement201305.pdf
発表論文/図書、出願特許一覧(2013年5月現在)



新学術領域研究「遺伝情報場」とは?

領域の概要

生命活動の理解のための「遺伝情報場」研究

overview3.jpg生命の遺伝情報はDNA分子に塩基配列として記録されている。この長大な分子は、ヒト細胞の場合(2倍体)、60億個の配列を含み、その全長は2メートルに及ぶ。これが、わずか100フェムトリットルの細胞核内に不均一に収納されている。生物はこのような遺伝情報をどのように空間的に収納し、効率よく適時的に発現し、正確に継承するのか。これらの疑問は、ゲノムの全塩基配列が解読された現在でも、生命科学の大きな謎である。DNAは、単に直鎖的に配置された数列ではなく、弾性や曲げ応力などの物性を持つ物理化学的な実体である。その理解のために、一次元の配列を越えて、その物性や形状あるいは三次元の配置など空間に印された暗号を解読することが重要となる。空間の持つ意味は、例えば、蛋白質の折り畳みを考えるとわかりやすい。一次元では遠隔のアミノ酸配列が蛋白質中では空間的に近接して機能する。同様のことが遺伝情報の空間的収納でも起こり、発現や継承を制御する。このような遺伝情報の収納・発現・継承を可能にする時空間の「場」を理解することを本領域の目的とし、その実現のために様々な分野の研究者を結集する。

収納場の研究

storage.jpgDNAを効率良くかつ機能的に細胞核に収納する仕組みや構造基盤について研究を行う。具体的には、細胞核の大きさを規定する要素(生体因子の量、空間の大きさ、配置など)を、コンピュータ生物学の手法を用いて解析し、遺伝情報の収納と発現の連関を検討する。DNAの形状や高次構造・機械的特性といった物理化学的特性を測定し、遺伝情報の収納に寄与する物理パラメーターを解析する。物性の異なるDNAの核内配置や構造と、増殖や分化における変化について解析し、遺伝子収納を制御する場について検討する。

発現場の研究

expression.jpgプロテオミクスの手法を用いて、遺伝情報発現に関与する蛋白質群を網羅的に同定し、遺伝情報発現場の分子基盤を明らかにする。1分子イメージング技術を用いて、遺伝情報発現の場を直接に「その場」計測して、遺伝子発現に働く蛋白質群とDNAのダイナミックな相互作用を解析する。発生・分化でのクロマチンの局所構造の変化や空間配置を解析し、多様な細胞系列を生み出す仕組みを明らかにする。

継承場の研究

inheritance.jpg生殖細胞形成過程または細胞増殖で働く、遺伝情報を正しく継承するために必要な分子基盤を、ゲノムワイドに作製されたGFP融合ライブラリーによる局在解析とDNAマイクロアレイによる遺伝子発現解析を用いて明らかにする。同定された分子に関して遺伝学的手法を用いて、継承場形成に対する役割を検討する。構造生物学的手法を用いた解析により、遺伝情報継承に働くDNA蛋白質複合体の構造とその動作原理を解析する。


文部科学省「新学術領域研究」は、既存の研究分野の枠に収まらない新興・融合領域や異分野連携などの意欲的な研究を適切に見い出し支援し、学術の水準の向上・強化につながる新たな研究領域や革新的・挑戦的な学術研究の発展を促すことを目的とする研究種目として平成20年度より新設されました。新学術領域一覧(文科省サイト)

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