仮軸分枝と葉序 Sympodial branching and phyllotaxis in Stellaria

コハコベは茎の片側に毛を叢生する。毛の生える方向は決まっていて、葉腋から腋芽が伸びるときに、主軸側(向軸側)に毛を叢生し、背軸側にはほとんど毛を生じない。

花は茎と連続しその頂端に形成されるので、茎と同じように向軸側に毛を叢生する。左の写真の花梗は背軸側が見えているので毛がほとんど無い。右の図は花と花梗を横から写したものである。毛の生えている側が向軸側である。

In Stellaria media, hair is formed on one side of a stem. When two shoots are formed from axils of opposite leaves, hair is formed on the adaxial side of each shoot. 

コハコベの栄養シュートは写真1のように、一見すると1本の茎が十字対生葉序を付けてまっすぐ伸びている単軸のように見える。ところがどうもそうではないようである。コハコベの栄養シュートの茎を見ると前のページの集散花序の腋芽から伸びた茎のように片側に毛が生えている。ところが、毛は節間茎(葉と葉の間の茎)ごとに生える方向が変わっていて、90度ずつずれている。どうしてだろうか。腋芽の付く位置を見ると、写真2のようにいつも毛と向かい合う位置に付いている。ここで前のページの葉腋から2本の腋芽が出る場合を思い出して欲しい。左右それぞれの葉の腋芽由来のシュートは向軸側を向くように毛が生えていた。いつも右か左のどちらか同じ側の腋芽だけが伸びて他方の腋芽が伸びないとすると、栄養シュートの茎の毛の付き方と同じパターンになる。葉は十字対生していて、90度ずつずれて回転しているので、毛の向きが90度ずつずれるのは葉序の回転と対応している。このことから、コハコベの栄養シュートの茎は仮軸分枝によってできていると考えられる。

Linearly aligned hair is formed in one face of a stem in Stellaria media and the direction rotates 90 degree. When we observe the node, an axillary bud is always faces to hair. Shall we remember that hair is formed on the adaxial side of axillary shoots in the cyme, which is shown in the previous page. It is possible to interpret that a vegetative shoot of Stellaria media is formed by sympodial branching, although it looks like a monopodial shoot. The rotated direction varies among stems.

コハコベの茎が分岐するときは、2枚の対生葉の間にあった茎頂分裂組織が消失し、かわりに、両方の葉腋の腋芽が伸び出す。まだ、数個対観察しただけなので確信は持てないが、どうも、左右のシュートで毛の回転方向、すなわち、葉序の回転方向が逆になっているようである。葉序はオーキシンの移動を考えることでかなり説明できるようになってきた(総説としてTraas 2013)。コハコベに見られるような葉序の転換はどのように基本システムを変えるとできるのだろうか。

維管束植物の祖先の茎はもともと二叉分枝で、原生の小葉類や一部のシダ類にそのなごりが見られる。二叉分岐からどのように発生過程を変化させることによって単軸の茎が進化してきたのかはよくわかっていない。茎の分岐様式の進化は陸上植物の体制進化において大きなイベントの一つであり、主軸形成機構の進化がそれを担っていた可能性がある。主軸形成機構とその進化に関するヒントが被子植物における仮軸分枝の研究から得られるかもしれない。

When two axillary shoots are formed at the node, they have different rotated directions. Phyllotaxis is well explained by the auxin movement (reviewed in Traas 2013). However, it appears that it is still difficult to explain this type of switching..

One of conspicuous innovation of body plans in land plants is the change from dichotomous branching to monopodial branching but the evolution of the development of branching is mostly unknown. Developmental and molecular mechanisms of overtopping appears one of keys to solve the problem and detailed studies of overtopping in sympodial branching may give insight.

Traas, J. (2013) Phyllotaxis. Development 140: 249-253.

栄養茎から集散花序に転換するとき、茎頂は花(図の1の花)で終わる。花梗の毛は直前の茎(図の4)の毛の向きと同じである。葉腋からシュートが形成されるときは毛の向きが変わるが、頂端に付く花は茎の延長なので葉序が変わらないのだろう。

栄養茎の最先端の2枚の葉(図の2と3)の腋からそれぞれ回転方向の違う二次花序が伸長する。上図では二次花序の葉腋から花が出て終わっているので二次花序の葉序の巻き方向はわからないが、二次花序の葉腋にさらに三次花序を形成することもあり、その際には葉序の巻き方が互いに逆になる。

花序の末端付近に付く花の花梗では毛がみられなくなる。

A shoot is terminated with a flower (1 in Figure). The direction of terminal flower pedicel hair is the same as the connected stem (4 in Figure). When new shoots are formed at the axils of two leaves (2 and 3 in Figure), two shoots twist in different directions each other.

カテゴリー: 0.1.1.Shoot シュート, 5.17.Caryophyllales.ナデシコ目, Phyllotaxis 葉序, Sympodial branching 仮軸分枝 パーマリンク