大学共同利用機関法人 自然科学研究機構 基礎生物学研究所

Home > 共同利用研究 : 共同利用研究概要 > 募集要項 > 大型スペクトログラフの概要

共同利用研究

大型スペクトログラフの概要

昭和54年度に、当研究所培養育成研究施設大型スペクトログラフ室に設置された、全国共同利用のための、世界最大の超大型分光照射設備で、性能等は次のとおりです。詳細は後掲の文献を御参照ください。

なお,平成14年度末に竣工の大型スペクトログラフの高度化により,A紫外・紫・青・緑・赤・遠赤の各色光のCWレーザー照射も可能になりました。また、二光子顕微鏡システムも稼動状態になっています。これら高度化システムを利用する場合は計画前にスペクトログラフとよく相談し実験計画を練ってください。既設機(大型分光照射装置)の扱いとはかなり異なるため同じ考え方では実験の成果が得られない可能性があります。その詳細につきましては大型スペクトログラフ室へお問い合わせください。

性能

出射スペクトルは、波長250〜1000ナノメートルの、紫外・可視・赤外にわたり、これを、全長約10メートルの馬蹄型の焦点曲面(図のB1)に分散させます。波長の異なる単色光を、生理的な条件のそろった、多数の生物試料に同時に照射して、その作用を比較することが可能です。焦点曲面上の単色光強度 は半値幅約5ナノメートルの条件において、波長500ナノメートルでは、約1016光量子/秒・平方センチメートル(約150マイクロモル/秒・平方メートル;約40ワット/平方メートル)でこれは熱帯の真昼の太陽光の各波長成分の光強度の約2倍以上です。波長分散は約0.8ナノメートル/センチメートルです。

高度化システムについては、以下の6系統を装備しています。
全てCWレーザーで

種類 波長(nm) レーザーパワー
A紫外 364 2W
紫(波長可変) 390-410 60mW
青(波長可変) 440-460 60mW
532 50mW
655 10mW
遠赤色 752 20mW

これらの光源を使用して高純度、高強度の照射が可能となるとともに、各種光学アタッチメントを用いて、ピンポイントの照射も可能となります。ただし、光強度と波長に関しては上記の性能の範囲内で制限されます。  二光子顕微鏡として、OLYMPUS IX71、FLUOVIEW300、MaiTai(780-920nm、2W)のシステムを設置しています。一部、上記のレーザー光などを引き込むことが可能です。詳細は直接大型スペクトログラフ室までお問い合わせください。

本設備の主たる使用目的は、植物・菌類の成長・分化・物質生成、動物の生殖等の生命活動が光により制御される仕組みを解明するために、光の波長による効 果の違いを精密に測定して、作用スペクトルを決定することです。その他にも、強力照射光源として、多種の使用が可能です。

主な構成

主光源(図のA1)は30キロワットの電極水冷型キセノン短アークランプ、光源部集光鏡(図のA3)は口径約80センチで曲率半径1.2メートルの凹面 鏡、分光部の配置はモンク・ギリーソン型、分光部集光鏡(図のA9)は約1メートル角で曲率半径9メートル、F/7の凹面鏡、回折格子(図のA10)は約 15センチ角の、溝数1200本/ミリメートル、ブレーズ波長250ナノメートルと500ナノメートルとのダブルブレーズ平面回折格子を、計36枚モザイ ク型に配置して、約90センチ角です。回折格子中心より水平焦点面までの距離は約10メートル、自動制御型試料照射暗箱(試料箱)(図のB2)多数。試料 箱の所定波長への設定には、数値制御(NC)方式による自動搬送機構(図のB3〜B6、C1)を用い焦点面方向の設定精度は±1ミリ以下です。

(図1)大型スペクトログラフの配置図(文献1より)、A,光源・分光室;B,照射室;C,操作室;D,光ファイバー出射室;E,制御機械室;F,電源室;A1,30kWキセノン短アークランプ;A3,光源部集光鏡;A5,光源部シャッター;A6,熱線吸収フィルター;A7,入射スリット;A8,変向平面鏡;A9,分光器部集光鏡;A10,ダブルブレーズ平面回折格子;A11,出射窓;B1,焦点曲面台;B2,試料箱;B3,自動搬送機x軸フレーム;B4,y軸フレーム;C1,自動台車;C2,制御パネル ;C3,CRT端末;C4,プリンター;D1,光ファイバー束 ( 長さ11m)D2,光ファイバー出射ユニット;D3,モニターパネル;E1,制御用コンピューター;E2,データタイプライター;E3,CRT端末;E4,プリンター;E5,自動搬送機用NC(数値制御)装置;E6,NC用インターフェース;F1,ランプ空冷装置 ;F2,ランプ電源装置;F3,ランプ制御パネル;F4,ランプ水冷装置

高度化システム

レーザー照射装置
レーザーに関しては、光ファイバーを用いた光伝送システムを有し、レーザー本体から照射場所まで自由に光を伝送することが可能になった。また、照射用に光均質照射箱を有し、20×20(mm)から100×100(mm)まで5段階の面積で照射することが可能であり、照射面の光ムラは5%未満である。コリメートレンズを用いてピンポイントでの照射(0.2Φ、1Φ、3Φ(mm))も可能である。また、光伝送システムにより既設大型分光照射装置への光の引き込みも一部可能となっている。

二光子顕微鏡システム
ピンポイント照射及び二光子による観察システムを整備中であるが、サンプルや目的に応じての最適化行う方向での対応をいたしますので、お問い合わせください。

文献

  1. M. Watanabe, M. Furuya, Y. Miyoshi, Y. Inoue, I. Iwahashi and K. Matsumoto (1982) Design and performance of the Okazaki Large Spectrograph for photobiological research. Photochem. Photobiol. 36:491-498.
  2. 渡辺正勝(2001)作用スペクトルと大型スペクトログラフ、(In)植物の光センシング、(細胞工学別冊植物細胞工学シリーズ16)(和田正三・徳富 哲・長谷あきら・長谷部光泰監修)pp.171-175、秀潤社

募集要項へ戻る