成果発表:ゾウムシが硬いのは共生細菌によることを解明

産業技術総合研究所(産総研)との共同利用研究の成果が発表されました。
重信秀治特任准教授前田太郎博士研究員がゾウムシの共生細菌のゲノム解読を行いました。


ゾウムシが硬いのは共生細菌によることを解明
– チロシン合成に特化し、外骨格の硬化・着色に必須な共生細菌 –

ポイント

  • ゾウムシ 4 種の共生細菌ナルドネラの極小ゲノムの配列を決定、解析
  • アミノ酸の一種であるチロシン合成に特化し、ゾウムシ外骨格の硬化・着色に関与
  • 共生細菌の新規機能のみならず、新たな害虫防除開発のシーズとして期待

詳しくは産総研プレスリリースのページをご覧ください。
http://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2017/pr20170919/pr20170919.html

論文へのリンク:http://www.pnas.org/content/114/40/E8382.abstract

京都産業大学 近藤寿人 教授との次世代シーケンサー共同利用研究の成果が Development に掲載されました

京都産業大学 総合生命科学部 近藤 寿人 教授と自然科学研究機構 基礎生物学研究所 生物機能解析センター 重信 秀治 特任准教授らは、「In vivo ビオチン化転写因子を用いた汎用性と定量性をもった ChIP-Seq 解析法の確立」に関する共同研究を行い、その解析法を多能性幹細胞の研究に用いて、これまでの定説を覆す、転写因子 ZIC2 を中心とした新しい制御機構を発見しました。

【発表論文】
ChIP-seq analysis of genomic binding regions of five major transcription factors highlights a central role for ZIC2 in the mouse epiblast stem cell gene regulatory network
(5種類の主要な転写因子に関するゲノム上の結合領域の解析から、マウスエピブラスト幹細胞では ZIC2 が遺伝子発現制御の主役であることが明らかになった)

英国発行の国際科学雑誌 Development 114巻11号1948-1958
(5月30日正午[英国時間]刊行)に掲載

【本研究に参加したメンバー】
京都産業大学  近藤寿人、飯田英明(大学院生、現研究員)
基礎生物学研究所  重信秀治山口勝司(主任技術職員)

[試料作製と予備解析]
大阪大学(生命機能研究科) 松田一成、三上智之(大学院生、現社会人)
Munazah Andrabi(研究員、現 Manchester 大)

[ゲノムデータ解析ツールの提供と解析のサポート]
九州大学(医学研究院) 沖 真弥(助教)

[転写因子ビオチン化システムの提供]
Emory University School of Medicine    Jeremy B. Boss(教授)

詳しいプレスリリースは以下をご覧ください。

基生研プレスリリース
多能性幹細胞について、転写因子ZIC2を中心とした、定説を覆す新しい制御機構を発見
〜 iPS細胞をはじめとした多能性幹細胞の研究の新展開を期待 〜

アスパラガスの雌雄を分ける性決定遺伝子に関する共同利用研究の成果が Genes to Cells 誌に掲載されました

概要

 奈良先端科学技術大学院大学(学長:小笠原直毅)バイオサイエンス研究科の高山誠司客員教授(現東京大学)、村瀬浩司助教らの研究グループは基礎生物学研究所、徳島大学、東北大学、九州大学との共同研究により、全ゲノム(遺伝情報)や遺伝子の発現を網羅的に解析する手法を用いて、アスパラガスの雌雄を決める性決定遺伝子を世界で初めて発見しました。
 植物の多くは 1 つの花におしべとめしべをもつ両性花ですが、イチョウ、キウイフルーツ、アスパラガスなどは雄花のみをつける雄株と雌花のみをつける雌株に分かれます。これらの植物の性別はほ乳類と同様に性染色体によって制御されており、アスパラガスでは性染色体が XY のとき雄株、XX のとき雌株となります。アスパラガスの花は発生初期では雄花と雌花で違いはありませんが、発達するに従い雄花ではめしべの、雌花ではおしべの発達が停止します。そのため、Y 染色体上にはおしべの発達を促進する遺伝子とめしべの発達を抑制する 2 つの性決定遺伝子が存在すると予想されていました。
 本研究では MSE1 と名付けた転写因子の機能があるタンパク質の DNA を持つ遺伝子がおしべの発達を促進するアスパラガスの性決定遺伝子であることを明らかにしました。この成果はアスパラガスの性別を決定する鍵因子を明らかにしただけでなく、人為的に植物を雌雄があるタイプに改変したり、雌雄をあわせ持つ両性花に戻したりする技術へ発展する可能性があり、植物の育種に応用されることが期待されます。
 この成果は日本分子生物学会および米国の John Wiley & Sons 社が出版する Genes to Cells 誌 1 月号( 1 月 13 日発行)に掲載されました。

生物機能情報分析室チームの貢献

 本研究は基礎生物学研究所の共同利用研究の一つである、「統合ゲノミクス共同利用研究」の課題として実施されました。当研究所の生物機能解析センター生物機能情報分析室(重信秀治特任准教授、山口勝司技術職員ら)のチームは、次世代シーケンシング技術を駆使し、アスパラガスのゲノム解析に貢献しました。
 アスパラガスのゲノム解析は難易度が高いものでした。何度か失敗しつつ、基生研チームは、奈良先端大のチームとともに試行錯誤の末、若い先端葉組織から質の高い DNA を抽出することに成功し、さらに、シーケンスライブラリー作製の過程では DNA 損傷修復するなどの工夫を施しました。完成したライブラリーを、特徴の異なる 2 つのタイプの次世代 DNA シーケンサー(イルミナ社 HiSeq プラットフォームと PacificBio 社 PacBioRSII プラットフォーム)でシーケンスし、それらのデータを組み合わせて、アスパラガスゲノムの性決定遺伝子の候補領域近傍を集中的に解析しました。その結果、性決定遺伝子の同定と塩基配列の決定に成功しました。

詳しくは下記の論文や各機関のプレスリリースのページをご覧ください。

論文情報

  • 論文タイトル:MYB transcription factor gene involved in sex determination in Asparagus officinalis(和訳:アスパラガスの性決定に関わるMYB転写因子)
  • 著者:Kohji Murase1, Shuji Shigenobu2, Sota Fujii1, Kazuki Ueda1, Takanori Murata1,Ai Sakamoto1, Yuko Wada1, Katsushi Yamaguchi2, Yuriko Osakabe3, Keishi Osakabe3,Akira Kanno4, Yukio Ozaki5 and Seiji Takayama1,6
  • 所属:1奈良先端科学技術大学院大学,2基礎生物学研究所3徳島大学、4東北大学,5九州大学,6東京大学
  • DOI: 10.1111/gtc.12453
  • 掲載誌:Genes to Cells( 1 月号)

プレスリリース

メディアへの掲載情報

  • 2017.1.25 日経産業新聞
    重信秀治特任准教授らによる「アスパラガスの雌雄を分ける性決定遺伝子を世界で初めて発見 植物の性の進化、ダーウィンの予測を裏付け ~有用な作物の育種に期待~」に関する研究成果について、1 月 25 日の日経産業新聞にて紹介されました。
  • 2017.1.26 日刊工業新聞
    重信秀治特任准教授らによる「アスパラガスの雌雄を分ける性決定遺伝子を世界で初めて発見 植物の性の進化、ダーウィンの予測を裏付け ~有用な作物の育種に期待~」に関する研究成果について、1 月 26 日の日刊工業新聞にて紹介されました。

東工大・若林先生とのクラミドモナスの走光性に関する共同利用研究の成果が、PNAS 誌に掲載されました

論文情報

掲載誌:Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America

論文タイトル:Eyespot-dependent determination of the phototactic sign in Chlamydomonas reinhardtii

著者:*Noriko Ueki , *Takahiro Ide, Shota Mochiji, Yuki Kobayashi, Ryutaro Tokutsu, Norikazu Ohnishi, Katsushi Yamaguchi, Shuji Shigenobu, Kan Tanaka, Jun Minagawa, Toru Hisabori, Masafumi Hirono, and Ken-ichi Wakabayashi (*:共同筆頭著者)

DOI:10.1073/pnas.1525538113

要点

  • 単細胞緑藻のクラミドモナスの眼点色素を欠失した新しい突然変異株が、野生株と逆方向の走光性を示すことを発見
  • 眼点色素を失った変異株は、細胞が「凸レンズ」として振る舞って光を集光するため、レンズ効果により光源方向を「勘違い」することを実証
  • 藻類は細胞のレンズ効果に打ち勝って正しい光源方向を察知するために、光受容体の周辺に色素を濃縮・配列させたと考えられる

備考

本研究は基礎生物学研究所共同利用研究「次世代DNAシーケンサー共同利用実験」のサポートを受けて実施されました。
私たち基礎生物学研究所・生物機能情報分析室は次世代シーケンシングによるクラミドモナス変異体の原因遺伝子同定の過程に貢献しました。シーケンスライブラリは当室で作製し、当施設の共同利用機器であるイルミナ社HiSeq2000でシーケンスしました。クラミドモナスのゲノムは GC 含量が高く通常の方法ではシーケンスが困難であったため、特別な工夫を施しました。また、若林先生は当室の重信准教授が主催する基生研ゲノムインフォマティクス・トレーニングコースの修了生でもあります。

プレスリリース

基生研プレスリリース:http://www.nibb.ac.jp/press/2016/05/10.html
東工大プレスリリース:http://www.titech.ac.jp/news/2016/035113.html

メディアへの掲載情報

皆川純教授、重信秀治特任准教授らのグループによる共同研究「藻類の「眼」が正しく光を察知する機能を解明 -「眼」の色は細胞のレンズ効果を防ぐために必要だった- 」に関する研究成果について、5月20日の科学新聞に紹介されました。

論文発表: 筑波大・和田研究室との共著論文が、PLOS ONE に発表されました

Authors: Hiroyuki Koga, Haruka Fujitani, Yoshiaki Morino, Norio
Miyamoto, Jun Tsuchimoto, Tomoko F. Shibata, Masafumi
Nozawa, Shuji Shigenobu, Atsushi Ogura, Kazunori Tachibana,
Masato Kiyomoto, Shonan Amemiya, Hiroshi Wada
Title: Experimental approach reveals the role of alx1 in the evolution
of the echinoderm larval skeleton
Journal: PLOS ONE
DOI: 10.1371/journal.pone.0149067

RNA-seq 解析によりウニ類における骨片形成の進化過程を明らかにしました。
共同利用研究の成果であるとともに、長谷部新学術の成果でもあります。
共著:重信、(柴田、野澤)

URL: http://www.plosone.org/article/metrics/info%3Adoi%2F10.1371%2Fjournal.pone.0149067

論文発表:神戸大・石崎先生らゼニゴケ研究者コミュニティとの RNA-seq の論文が PCP 誌に発表されました

Authors: Asuka HigoMasaki NiwaKatsuyuki T. YamatoLixy YamadaHitoshi SawadaTomoaki SakamotoTetsuya KurataMakoto ShirakawaMotomu EndoShuji ShigenobuKatsushi YamaguchiKimitsune IshizakiRyuichi NishihamaTakayuki Kohchi and Takashi Araki. (2015).
Title: Transcriptional Framework of Male Gametogenesis in the Liverwort Marchantia polymorpha L .
Journal: Plant & Cell Physiology
doi: 10.1093/pcp/pcw005

URL: https://pcp.oxfordjournals.org/content/early/2016/02/07/pcp.pcw005.abstract

論文発表:井口研究室(基生研)とのワニの RNA-seq の論文が BMC Genomics 誌に発表されました

Authors: Ryohei Yatsu; Shinichi Miyagawa; Satomi Kohno; Benjamin B.
Parrott; Katsushi Yamaguchi; Yukiko Ogino; Hitoshi Miyakawa; Russell
H. Lowers; Shuji Shigenobu; Louis J Guillette Jr; Taisen Iguchi
Title: RNA-seq analysis of the gonadal transcriptome during Alligator
mississippiensis temperature-dependent sex determination and
differentiation
Journal: BMC Genomics
DOI: 10.1186/s12864-016-2396-9

URL: http://bmcgenomics.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12864-016-2396-9

研究報告:アリのコミュニケーション 触角に秘密 [神戸大学との共同利用研究成果] 

神戸大学理学研究科の北條賢特命助教、佐倉緑准教授、尾崎まみこ教授らとの次世代シーケンサー共同利用研究の成果論文が Scientific Reports 誌に掲載されました。
詳しくは下記 URL をご覧ください。

この研究には生物機能情報分析室のメンバーも大きく貢献しました。
共著:重信、山口
謝辞:浅尾、北爪、藤田

アリのコミュニケーション 触角に秘密(共同利用研究成果)
URL:http://www.nibb.ac.jp/pressroom/news/2015/09/04.html

論文発表:岡田元所長研(基生研)との、シロイヌナズナの変異同定に関する共同研究の共著論文がオンラインで出版されました

Toyokura Koichi, Yamaguchi Katushi, Shigenobu Shuji,
Fukaki Hidehiro, Tatematsu Kiyoshi, Okada Kiyotaka (2015).
Mutations in Plastidial 5-Aminolevulinic Acid Biosynthesis
Genes Suppress Pleiotropic Defect in Shoot Development of
Mitochondrial GABA Shunt Mutant in Arabidopsis.
Plant and Cell Physiology.
DOI: 10.1093/pcp/pcv050

URL: http://pcp.oxfordjournals.org/content/early/2015/04/02/pcp.pcv050.abstract

次世代DNAシーケンサー共同利用実験(課題番号11-714)

プレスリリース:井口研究室(基生研)との共同研究成果がプレスリリースされました

基礎生物学研究所から井口研究室(基生研)との共同研究成果のプレスリリースが行われたので、お知らせします。

日長時間に応じてメスとオスの出現をコントロールできるミジンコの誘導系の確立と、環境依存型性決定を制御する幼若ホルモンの生合成因子の発見

URL:http://www.nibb.ac.jp/pressroom/news/2015/03/31-2.html