プレスリリース:シロアリの兵隊分化を決定する遺伝子の発見

富山大学大学院理工学研究部(理学)の前川清人准教授と大学院理工学教育部の矢口甫氏(現琉球大学熱帯生物圏研究センター博士後研究員)らの研究グループは、当室の重信秀治特任准教授らと共同で、当室で運用している次世代DNAシーケンサーを駆使することにより、シロアリの兵隊分化を決定する遺伝子を発見しました。


シロアリの兵隊分化を決定する遺伝子の発見
〜女王とのかかわり合いが生み出す分化のしくみ〜

富山大学大学院理工学研究部(理学)の前川清人准教授と大学院理工学教育部の矢口甫氏(現 琉球大学熱帯生物圏研究センター博士後研究員)らの研究グループは,基礎生物学研究所の重信秀治特任准教授らと共同で,シロアリの兵隊分化を決定する遺伝子を発見しました。研究グループは,次世代DNA シーケンサー(大規模塩基配列解読装置)を用いた網羅的な解析を行い,兵隊分化の初期に働く遺伝子を探索しました。その結果,兵隊に分化する個体では,リポカリンとよばれる輸送タンパク質遺伝子が極めて高く発現することを突き止めました。リポカリン遺伝子は,シロアリへの進化の過程で配列が特徴的に変化しており,タンパク質は腸の上皮細胞に局在していました。機能解析の結果,この遺伝子が女王からの栄養物質の受け渡し行動を介して,兵隊分化を生じさせることが明らかになりました。

本成果は,英国王立協会紀要「Proceedings of the Royal Society B: Biological Sciences」に掲載されました。

論文タイトル:A lipocalin protein, Neural Lazarillo, is key to social interactions that promote termite soldier differentiation.
著者:Hajime Yaguchi, Shuji Shigenobu, Yoshinobu Hayashi, Satoshi Miyazaki, Kouhei Toga, Yudai Masuoka, Kiyoto Maekawa
DOI:https://doi.org/10.1098/rspb.2018.0707

詳しくは以下のページをご覧ください。
http://www.nibb.ac.jp/press/2018/07/26.html

プレスリリース:植物と共生するアーバスキュラー菌根菌のゲノムを高精度に解読

当室の重信秀治特任准教授らは、当室で運用している1分子DNAシーケンサーを駆使することにより、植物と共生するアーバスキュラー菌根菌(AM菌)の高精度なゲノム解読に成功しました。その結果、特殊なリボソームDNA遺伝子の特徴を発見しました。


肥料節減に向け、植物と共生するアーバスキュラー菌根菌のゲノムを高精度に解読
〜植物から得ている栄養素を明確化・特殊な遺伝子構造を発見〜

アーバスキュラー菌根菌(以下AM菌)は植物の根の中に菌糸を発達させるとともに、土中にも菌糸を張り巡らし、植物の根が届かない場所のリン等を植物に届け、代わりに糖などの光合成産物を受け取る共生関係を築いています。この共生関係は植物の生育を促進する効果があり、将来的に、リン肥料などの消費を押さえる生物資材としての活用が期待されています。

今回、基礎生物学研究所の前田太郎研究員、重信秀治特任准教授、川口正代司教授らを中心とした研究グループは、代表的なAM菌であるRhizophagus irregularisのゲノムを従来よりも格段に高精度に解読することに成功し、AM菌が脂肪酸やビタミンB1などの栄養素の合成に関わる遺伝子を欠損していることを明確にしました。AM菌は植物との共生無しでは胞子増殖できませんが、今後これらの栄養素を人為的に投与することによってAM菌を単独で大量培養できる可能性があります。さらに、AM菌の種の同定や植物への効果の評価に使われてきた遺伝子マーカーであるリボソームDNA遺伝子が、他の生物では見られない特殊な性質をもつことを明らかにしました。

AM菌のゲノムは繰り返し配列が多く、その解読は従来の技術では困難でした。そこで、我々は繰り返し配列の解読に有利な一分子DNAシーケンサーを利用することにしました。我々生物機能情報分析室は、シーケンスライブラリの作製、シーケンシング、並列コンピュータによるアセンブルなどゲノム解読に関わる一連の過程を担当し、高精度なゲノム情報の取得に貢献しました。

本研究成果は「Communications Biology」に2018年7月10日付けで掲載されました。

論文タイトル: Evidence of non-tandemly repeated rDNAs and their intragenomic heterogeneity in Rhizophagus irregularis
著者: Taro Maeda, Yuuki Kobayashi, Hiromu Kameoka, Nao Okuma, Naoya Takeda, Katsushi Yamaguchi, Takahiro Bino, Shuji Shigenobu, Masayoshi Kawaguchi
DOI: 10.1038/s42003-018-0094-7

詳しくは以下のページをご覧ください。
http://www.nibb.ac.jp/press/2018/07/10.html

ゲノムインフォマティクス・トレーニングコース 2018 秋 申込受付中

基礎生物学研究所は、ゲノムインフォマティクス・トレーニングコースを開催します。

「BLAST自由自在~配列解析の極意をマスターする~」
日程:2018 年 9 月 6 日 – 7 日

詳細は下記 URL をご覧ください。サイドメニューのバナーからも同 URL へアクセス可能です。

http://www.nibb.ac.jp/gitc/2018-3rd/(申し込み受付は終了しました) 

テクニカルセミナー:マルチモードプレートリーダー概要説明&取扱説明会を開催しました

本日、マルチモードプレートリーダー概要説明&取扱説明会を開催しました。

午前の概要説明・簡易取扱説明には 14 名の方が参加されました。

午後の希望者向け取扱説明には 9 名の方が参加され、実際のサンプルを測定しながら、装置や解析ソフトウェアの操作方法の説明を聞きました。