卵や精子、すなわち生殖細胞は次世代に生命を受け渡す大切な細胞です。この生殖細胞は、卵巣や精巣などの生殖巣とよばれる器官のなかでつくられます。発生過程の初期に生殖細胞になるように運命づけられた細胞(始原生殖細胞)は、生殖巣の中で細胞の形や性質をダイナミックに変化させ、最終的に卵や精子へと分化するのです。このダイナミックな変化を制御するメカニズムを知るためには、そこで働く遺伝子のカタログをつくることがまず重要です。基礎生物学研究所の重信秀治助手、北舘佑総研大大学院生、小林悟教授らの研究グループは、発生初期の生殖巣(胚生殖巣)の重要性に注目しました。胚生殖巣のなかで生殖細胞の発生のプログラムがおおよそ決定されると考えたからです。小林教授らは,モデル生物であるキイロショウジョウバエの胚生殖巣で活性化する遺伝子を網羅的にカタログ化することに成功しました。その結果、およそ3,000もの遺伝子の活性化が認められました。これはショウジョウバエ全遺伝子の約20%に相当します。生殖細胞の発生は、多くの生物で共通点が見られることから、今回の研究成果はヒトを含めた動物全般の生殖細胞研究における重要な基礎情報になるとともに、将来生殖医療への展開も期待できます。研究の詳細は、2006年9月1日、米国科学アカデミー紀要(PNAS)オンライン版で先行発表されました。 |
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