研究概要

RESEARCH 自己組織化を介した陸上植物の体制進化

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陸上植物の進化過程におけるもっとも顕著な変化は、永続性胞子体幹細胞の獲得と胞子体の枝分かれです。これらの進化によって維管束植物の胞子体(2倍体)は大きな体を作れるようになりました。コケ植物の胞子体幹細胞はすぐに分裂が止まってしまうし、枝分かれもしないので、配偶体に半寄生して生活しています。ヒメツリガネゴケ野生型の胞子体幹細胞は10回ほど分裂すると分裂が止まり、胞子嚢形成が開始します。一方、ポリコーム抑制複合体2遺伝子欠失によって誘導された胞子体幹細胞は永続的に分裂し続け、ひょろ長い胞子体ができます。つまり、永続性胞子体幹細胞を獲得したのです。しかも、予想外なことに、しばらくすると、胞子体が枝分かれしてきたのです。我々は、胞子体が大きくなると組織の異なった位置で化学物質の濃度勾配がおこり、自己組織化によって、自動的に枝分かれ(新しい幹細胞の形成)がおこってしまうのではないかという作業仮説をたてました。現在、オーキシン応答性遺伝子、クラス1KNOX遺伝子の発現を可視化し、枝分かれのときに何がおこっているのかを観察しています。一見関連しないように思える永続性胞子体幹細胞の獲得と胞子体の枝分かれが同時に進化しうるのだとしたら、いろいろな複合適応形質の進化も同じようなロジックで説明できるのかもしれません。将来の課題です。

枝分かれしたポリコーム抑制複合体2遺伝子欠失株